幼少期の修業・魔法編2-6

探検の書

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「うん、それじゃあ実技を再開するよ。リオ君、一度ステータスを確認してみてよ。」

祖父はコクリッと首を縦に振ると優しい笑みを浮かべ修業を再開する。

「うん、分かった。」

俺は祖父の言葉に頷き心の中でステータス表示を念じて確認する。

(ステータス)

[力量]
生力33/33魔力21/23筋力13/13速力20/20知力10/10器力10/10

[技能]
・魔力放出Ⅰ (1/1000)

俺は心の中でステータスと念じて確認すると力量の表示形式の変化と技能欄に新しい技能が追加されていることに気がついた。

(取り敢えず変更してあるのは力量の減り?がわかる様になった事と技能の欄に新しく魔力放出が手に入った事だな。魔力放出の経験値は魔力操作と同じく高いな。)

「大師匠!確認したよ。」

「ではリオ君。ステータスの変化している部分を教えてくれるかい?」

「うん?ステータスを見せれば良いの?」

俺は祖父の言葉に横に首を捻り祖父に言葉の意図を尋ねた。

「リオ君、冒険者を目指すならそれはダメだよ。ステータスの内容は例え家族でも気軽に見せてはいけないんだよ。」

祖父は俺が気軽にステータス表示をする姿勢に真剣な表情になり、両膝を曲げて俺に目線を合わせながら注意した。

「えっ?家族なら別に良いと思うけど…。」

俺は祖父からの突然な注意に困惑して自身の意見を祖父に述べた。

「うん、甘いよ。私達も家族のステータスの内容を他言しない様に配慮をしているけど、何かの拍子に他言してしまう可能性はあるからだよ。例えばお酒の席とかで酷く酔ってしまった時とかにだよ。」

祖父が俺に言いたかったことは個人情報の大切さと情報流出の危険性についてだった。

「それは、まぁ、確かに。そうなんだけど…。」

俺はそこまで考えていたわけでは無いので盲点だと思い反省をすると同時に極端すぎる状況に少し納得がいかず少し顔を顰めた。

「ステータスの内容を知られると言う事は場合によっては即座に命に関わる事もある。例えば自分が思わず言ってしまった内容を更に他の人が言ってしまって、敵に味方の魔法使いのステータスを知られたとするよ。魔法使いは火魔法しか使えないと分かっていれば敵は水魔法使いを用意して攻めてくるよ。でも知られていなければ少なくても用意不足にはなるよ。」

祖父はそんな俺を見て苦笑するがすぐに表情を引き締め情報流出時に起こる可能性を示唆した。

「うん、分かった。ありがとう、大師匠。それで俺の変化している所は力量がどれだけ減ったかわかる様になった事と新しく魔力放出の技能が習得した事だよ。」

俺はそこでようやく事の重大性を頭で想像できたので胸につかえた気持ちを無くすことができた。

「うん、教えてくれてありがとう。さて、リオ君。力量の変化値は相手の力量を知る為の手段になり得るんだよ。」

祖父は俺がスッキリした表情を見て引き締めた表情を緩めて穏やかな表情で解説を続ける。

「相手の力量を知る?大師匠!どう言う事?」

俺は前世の知識にある所謂”鑑定”と言う名の人物情報すら鑑定してしまう万能技能以外で相手の力量を知る手段がある事に少し興奮した。

「仮に防具無しでリオ君の生力が20で筋力が20だったとするよ。その状態で相手に素手で殴られて怪我をした時リオ君の生力が5減少したとする。その場合に相手の筋力は25あるんだけど、どう言う仕組みか分かるかい?リオ君。」

「うーっと、つまり筋力の値はそのまま自分の攻撃力であり防御力の値だってこと?」

俺は祖父の質問に頭の中で攻撃力と防御力の値が筋力値であると仮定して単純な計算する。

(前世の頃は色々便利すぎて頭を使う事をしなかった結果、単純な計算でも暗算が出来なくなったんだよなぁ。前世を思い出してまだ間もないけど、あの頃が懐かしいや。)

「そう言うことだよ。付け加えて言えば全力を出し続けていても身体が壊れない値だと言うことだよ。生き物は常に全力では動けず脳が身体を守る為に力を抑えているんだよ。筋力値はそれを示しているんだよ。」

「ヘェ〜そうなんだぁ。」

俺は祖父の発言に納得と同時に改めて祖父の博識な知識に驚嘆した。

「但し、格上の相手と戦闘中にステータスを確認する場面はほとんどないよ。だから、リオ君には修業中にその変化を大体で良いから理解できる様に意識する癖を身につけて欲しいんだ。」

「うん、分かった。」

俺は祖父から言われた癖を早く身につける為に心の中で修業中の個人規則にした。

「それじゃあ、ステータスについて少し話がズレてしまったけど修業の続きをするよ。」

「オスッ!よろしくお願いします!」

「リオ君、これから最下級魔法について教えるよ。まずは私がやるからよく見ていてね。”我願う。土よ、盛り上がれ”」

祖父は土属性の最下級魔法を使う為に地面にしゃがみ込み右手を地面につけて発動した。最下級魔法は下級魔法以上と違うのか明確な魔法名は無く魔力放出を行い魔力に命令している様な結果を自己暗示している様な具合で発動した。

祖父の右手から放出する魔力は1m2の大地に干渉しボコボコと音を立てながら10cmくらいの高さまで盛り上がり祖父は手を地面から離した。

「大師匠、ごめん。失礼だと分かっているし言っちゃアレだけど言うね。最下級魔法って思った以上に地味だね。」

俺は最下級魔法魔法を見るまでに下級魔法をまた為かあまりのショボさに残念感で唇を引き攣り祖父に素直に感想を述べた。

「あははっ。うん、私もそう思うよ。でも最下級魔法は序盤の魔法使いの技能を上げるには効率が良いんだよ。消費魔力が魔力放出値と同じだけだから長く多くの経験を積めるんだよ。まぁ、地味で弱いけどその分良い魔法の練習にはなるよ。」

祖父は俺の引き攣った顔が面白かったのか素直な感想に喜んだのか分からないが笑い俺の意見に同意し続けて解説を行った。

「なるほど。ねぇ!大師匠!質問だけど下級魔法の消費魔力は大体どれ位なの?」

俺は最下級魔法の利点を聞き残念感が無くなったが、祖父の比較対象である下級魔法の消費魔力がどの程度なのか知らないまま説明をされていたので改めて質問した。

「うん?ああ、ごめんね。そうだね、下級魔法ボール系は威力が高い分、消費魔力は100だよ。」

祖父は顔を右上に向けて記憶を確認すると俺の質問に説明していなかった事を思い出した改めて説明を行う。

「ええっ!?そんなに多いの!?俺、1発も撃てないよ。」

俺は下級魔法の消費魔力の多さに非常に驚愕したと同時に今後の壁の高さに軽く落ち込んだ。

(下級魔法を1発放つのですら俺の総魔力のおよそ5倍だって?嘘だろ。なら中級魔法以上ととかっていくらになんだよ。)

「うん、だからこそだよ。魔法技能を上げるには魔法を使ったほうが上がりやすいよ。魔法技能が上がればそれだけ強度上昇の時に魔力上昇の幅も大きくなる。それにね、最下級魔法は良い所はこれだけじゃ無いんだよ。」

「えっ?大師匠、他にもあるの?」

俺は祖父の説明に落ち込んだ気持ちを一旦忘れる事で切り替えて説明を聞く。

「うん、勿論だよ。例えば、魔法技能の中に無詠唱と言うのがあるんだよ。これは魔語を言葉に発さなくても自分の想像力と魔法技能で魔法を放つ事が出来る技能なのさ。」

「便利だよね。」

「そう便利だよ。でもね便利であるが故にこの技能にはいくつか危険が含まれているんだよ。」

祖父は無詠唱の便利さに対する危険性を述べる為に表情を引き締めて説明をする。

「危険って、もしかして前に師匠が言っていた発動失敗だっけ?」

俺は母が魔法の説明をしてくれた時にふと母の友人の失敗談を思い出して祖父に言った。

「その通りだよ。これは状況によっては変化する事であるけど、下級魔法以上を無詠唱で発動すると起こる可能性の一つなんだよ。例えば多くの敵に囲まれて1人で多数の敵と戦っている時に焦りや恐怖が作用した結果、下級魔法ボール系がまっすぐ前に向かわず真下に落ちたとかだよ。」

「うわ〜。」

俺は改めて無詠唱の失敗時に頭の中で祖父の放ったファイアボールの威力と照らし合わせて想像し悲惨さを思い浮かべた。

「他にも無詠唱は相手に不意打ちができる分、最初の頃の消費魔力も通常よりも多くなるんだよ。具体的にはボール系を無詠唱すると消費魔力は2発分の200も消費されるんだよ。これは熟練度が上がれば少しずつ減っていくけどそれまでは割と大変なんだよ。」

「えぇ〜っ。んっ?最下級魔法は無詠唱で行っても危険は無いの?」

俺は祖父に聞けば聞くほど感じる無詠唱の利便性以上の習得初期の不便性に幻想が壊れた様な思いをした。

「うん、無いよ。魔法自体がほとんど魔法技能みたいなものだからだよ。」

「これだけ聞くと最下級魔法って凄いんだけど、話の流れ的には違うんだよね?」

「うん。仮に最下級魔法で下級魔法のボール系を魔法技能で再現しようとするとできない事はないんだよ。但し結果的に消費魔力は2発分の200も消費して威力も半減するから普通に放った方が速いし楽なんだよ。更に下級魔法を再現するには最低でも一つ上の中級魔法を扱える技量が無ければダメだから余計にだよ。」

祖父は苦笑しながら一つ一つ丁寧に説明した。俺は祖父の説明に頭の片隅でこの世界における最弱チートで無双するのは出来なそうと思いながら、知識を咀嚼し飲み込み、消化していった。

 

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