幼少期の修業・魔法編2-4

探検の書

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「うん、そろそろ座学も終わりが近いけれど、何か分からない事はあるかな?リオ君。」

祖父は膝の上に手を置き両膝を曲げて少しだけ屈むと右側に首を傾げながら質問する。

「う〜ん?突然そう言われてもなぁ。あっ!それじゃあ、大師匠!師匠!なんで魔力操作をする時にお腹から胸や頭を通じて身体中に巡っていく様に操作するの?」

俺は祖父の突然な質問に両目を瞑り、少し悩んだ末に魔力がお腹を起点に放出されている事について質問をした。

「う〜ん。リオ君に通じるか分からないけれど一応答えてみるよ。リオ君がまだ産まれる前、アーシャのお腹の中にいる時にどうやって食事をしていたか分かるかい?」

祖父は身体をピンッと伸ばし立ち上がると少し困惑しながら右人差し指を母のお腹に向けて質問した。

「えっ?うーん?分かんない。」

俺は祖父の質問に考えるふりをして自分の中の記憶を辿った。一応前世の保健体育では習ったからある程度は知ってはいる。しかし、今世では習った記憶があったか不確かだからだ。俺は軽く記憶を辿るが教わった覚えがなかったので、祖父には知らないと言う態度で改めて教えてもらうことにした。

「答えはお腹についているお臍を通じてアーシャが食べた食事の栄養がリオ君に届くんだよ。つまりお臍があるお腹は、人の体が作られていく時から栄養や魔力が集中する為にその名残として溜まりやすくなるのさ。」

「ヘェ〜そうなんだぁ。」

俺は祖父の話を聞いて感心して納得感を覚えた。要するにお腹は食べ物を消化した時のエネルギーや母体の中にいる時から純粋なエネルギーに触れ続けた結果から起点になったのである。

「うん。それとこの考えから、卵から産まれる魔物は卵から孵るまでの間に親の魔力を体全身に浴び続けるから魔法が使えると言われているんだよ。全部の魔物を調べたわけじゃ無いから確かな情報では無いんだよ。一応現在の”魔物学”と言う学問ではこれが正しいとされているんだよ。分かったかい、リオ君。」

「うん、なんとなく分かった様気がする。ありがとう、大師匠!」

俺は喉に引っかかった小魚の骨が取れた様に感じ祖父に笑顔で感謝する。

「どういたしまして。他には何かあるかい?」

「ほか…ほか…。う〜ん?あっそうだ!俺って一応水と土の2属性使えるみたいだけど、この2つを融合したら何属性になるの?」

俺は祖父と母の間の虚空に焦点を合わせる様に他に疑問がないか必死になって考える。

「それはね、リオ。水と土を融合させると泥属性魔法になるわ。」

「師匠…。なんか、泥って他のに比べて地味で弱そう。」

俺は母が答えた泥魔法に、それまで淡い期待をしていた事もあり肩を落とした様に愕然とする。

「そんな事はないわ。アタシは泥魔法も好きよ。リオが泥魔法を使える様になったら、その使い方を教えてあげるわ。そう落ち込まないの。」

母は俺の幼過ぎる態度に苦笑して、俺の左肩を右手でポンッポンッと叩き励ました。

「は〜い。」

「うん、それじゃあもう質問も無さそうだし、授業を再開するよ。魔法はどうしたら習得できる様になるのか?それは、魔力操作を鍛え、魔力放出を鍛える事だよ。」

祖父は俺と母のスキンシップを見守り、頃合いとばかりに手を一回叩き授業を再開した。

「魔力操作と魔力放出ね。」

「うん、そうだよ。魔法は魔力操作で手や足、体から少し離れた位置に魔力を集中し溜めを作り出すよ。そして、規定値まで溜まった魔力を変質し放出する形で押し出す事で魔法を放つ事になるんだよ。その時の魔語は頭の中で想像した魔法と言う結果を正しく発動する為の自己暗示でもあるんだよ。」

「ああ〜うん。なんとなく、分かった様な気がする。」

俺は祖父の話を聞き左手で髪の毛をかき上げながら魔法と言う化学っぽい学問を少しだけ理解出来た。

「今は分からなくて大丈夫だよ。後でリオ君に実際にやってもらうから、なんとなくで充分だよ。」

「おおっ!大師匠、本当!」

俺は実際に体験出来る事に”待っていました!”と言わんばかりに前屈みになって祖父と母に喜びを表した。

「うん、本当だよ。それで習得方法なんだけど、ステータスを表示しなくて良いから確認しながら聞いてよ。」

「うん、分かった!(ステータス)大師匠、開いたよ。」

俺は心の中で”ステータス”と思い目の前にステータスを用意しながらか祖父の話を熱心に聞く。

「そこに魔力操作の熟練度が書いてあるのが分かるかい?えーっと、技能の隣に書いてある10段階ある内の数字の事なんだよ。最下級魔法は魔力操作の熟練度1以上で属性魔法の熟練度が1〜2の2つの条件で習得できる様になるんだよ。後は魔力操作の熟練度が1つずつ、属性魔法は2つずつ上昇する毎に下級、中級、上級、特級と習得の幅が増えていくんだよ。分かったかい?リオ君。」

祖父は魔法鞄から杖を取り出すと地面を黒板の様に使い俺にも理解できる様に噛み砕きながら説明する。

「うん!つまり今の俺は最下級魔法なら習得が出来るって事だね!」

俺は”早く魔法が使いたいから”と言う単純明快な思考回路に今日1番の集中力を発揮して理解に努める。

「そう言う事だよ。アーシャ。私はリオ君に実技をする時についでに”魔力酔い”を体験してもらおうと思うんだけど君はどう思うか聞いても良いかい?」

祖父は先程の反省を生かす為に俺に魔力酔いと言う体験をさせるかどうか母の方を向き質問する。

「ええ、アタシも体験させて良いと思うわ。魔法を使う者として避けては通れないなら今のうちに慣れていた方が良いわ。」

母は祖父に納得した表情で答える。

「うん、ありがとう。リオ君、これが座学の最後の魔法を使う時の注意すべき事なんだよ。”魔力酔い”って分かるかい?」

「魔力酔い?うーん?魔力を使い切ったら身体に起こるやつでしょ?具体的に何かって言われてもなぁ。分かんない。」

俺は魔力酔いと言う言葉に過去のステータスを詳しく調べた時の事を思い出し”そう言えばそう言うの合ったなぁ”と思い出した。

「魔力酔いはナド(体内魔力)が底を尽きた時に身体は空気中に漂うゴド(体外魔力)を無理矢理に吸収して魔力回復を図ろうとする現象なんだよ。魔力酔いは自身の最大魔力値1/10、つまり10個に分けた内の1個の値まで回復を止めることが出来ないんだよ。」

「無理矢理?止められない?」

俺は祖父の話す表情と声色に硬さを覚え、話の方向性に雲行きが怪しくなったのを感じた。

「そうだよ。本来なら魔力は瞑想や睡眠などで本人の体に合った速度で回復するんだよ。しかし魔力酔いが起こると、仮に最大魔力値が100だった時にゴドを強制的に吸収してナドを10まで回復するんだよ。」

「大師匠!例え強制的でも魔力が回復するから良い事なんじゃないの?それとなんで魔力酔いなんて起きるの?」

俺は前世のアニメやゲームで培った知識により魔力が底を尽きても疲労感を感じる程度の認識でいた。その為に1/10でも強制的に回復するのは、それ程に悪いとは感じられなかった。

「うん、魔力は生物にとって必要不可欠の力であると同時に必要以上に取り込んだり、身体に晒されたりすると毒の様な効果を発揮するんだよ。普段はナドがあるからゴドを吸収してもナドが体内で解毒して体外を守ってくれるんだ。でも、ナドが無いと言う事は魔力と言う毒に対する守る術が無いのと同じなんだよ。」

「えっ、こわっ。」

俺は魔力の毒性と言う側面に背中に冷や汗をかき恐怖する。

「そう、故に身体はゴドを強制的に吸収してでも守ろうとする作用なんだよ。」

「ヘェ〜そう…んっ?大師匠!ナドはゴド、魔力を解毒する性質があるならなんで属性魔法を発動時に自身の身体に属性魔力が傷を与えるの?おかしく無い?」

俺は祖父の魔力酔いの原理に納得する直前に眉を潜めて、胸の下で両腕を組み左上を見上げながら祖父に疑問を呈した。

「うん、素晴らしい着眼点だよ。それはナドもゴドも純魔力であるからだよ。つまりナドの解毒能力は純魔力のみに働く為に属性魔力には意味を成さないんだよ。そもそも属性魔力まで体内で解毒をしてしまったら魔力を体外に放出する前に属性を変化できず属性魔法が使えなくなってしまうからだよ。分かったかい?リオ君。」

祖父は両手をパチパチしながら少し狂気じみた笑顔で説明を続ける。

「う、うん…。でも、魔法って難しいよ。大師匠。」

俺は祖父にゾッと背筋が凍る恐怖心を抱くが、それ以上に感じる魔法の難しさに頭を抱えた。

「うん、そうだよ。でもだからこそ魔法は楽しいでしょ?リオ君。」

祖父は頷き一呼吸すると狂気じみた感じが無くなり、子供の様な純粋な笑顔で笑った。

「うん!新しい事を学ぶって楽しかった!」

俺は祖父に釣られる様な形で笑顔で頷き同意した。

 

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