幼少期の修業・魔法編1-3

探検の書

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「さて、それじゃあ昼食も取り終えたし、食事休憩をしてから少し魔法を教えてあげようか。リオ君。アーシャ、リオ君にはどの程度教えたのかな?」

「父さん…。何でアタシが教えた前提で話しているのよ…。」

母は祖父に少し苦笑いしながら答える。

「おや?彼とは少ししか接していないが、彼が同年代よりも賢く物の分別ができる程度は私にも分かるよ。なら母である君だったら既に教えてもおかしくないと思っていたのだが?」

祖父は両目を閉じ左手の掌を上にして母に向けながら肩をすくめた。

「はぁーっ。どんな観察眼してんのさ、降参だよ。」

母は溜め息をすると祖父に呆れる様に言う。

「ははは。まだまだ私も現役の冒険者ってことだ。」

「取り敢えず、魔力感知と獣人種の無属性魔法、魔力操作までは簡単に説明したよ。ねぇ?リオ。」

母が少しだけ自慢げな表情で俺を見る。

「そうだね。魔力感知と魔力操作はあれから起きた後と寝る前の日課にして行っているよ。」

「そうか、そうか。それなら今日は時間も少ないし座学中心よりもより実体験できる内容の方が良いかな。」

「それなら、アタシも一緒に教えるの手伝うよ。」

「いや、今日の所はアモン君、君に助手を任せたい。良いかな?」

母は今日の授業方針を聞き、自身も指導を立候補するが祖父は断る。

「なっ!?」

母はまさか断られるとは思っていなかったのか驚愕の表情で声を上げテーブルに身を乗り出そうとする。

「?お義父さん、いいんですか?俺は魔法専門じゃ無いですから、アーシャの方がリオの為になると思いますけど…。」

対して父は”何で自分が選ばれたのか分からない”と首を傾げ母を推薦する。

「ハッ!そ、そうよ!魔法ならアタシの方がいっぱい教えられるわ!」

母は父の声にハッとして右手を胸の中心に当ててアピールをする。

「ああ、そうだね。でもそれなら尚の事、君にはじっくりと時間をかけて彼に教えて欲しいんだ。今日の様な中途半端で終わるよりもね。」

祖父は真剣な表情で母を諭す様に話す。

「くっ。で、でも…。」

母は納得していないのか視線を左右に動かす。

「私は何も、君を未熟者扱いしているわけでは無いよ。今日は出来たら、君の言葉でアリアに近況報告をして欲しいんだ。頼めるかい?アーシャ。」

「…。分かったわ。今日は諦めるわ。でも!次は絶対アタシが教えるんだからね!」

母は祖父の真意を聞いた事で口をとんがらせてまるで少女の様に渋々納得した。

「ああ、勿論だとも。それで早速なんだが、私は明日も特に用事が無いのだが、リオ君とアーシャは予定は空いているかい?」

「んーっ?本当なら明日、俺はミンク婆ちゃんの店の手伝いだったけどそれも今日無くなったから暇だよー。」

「(チラッ)アモン…。ごめん…。アタシ…。」

母は父をチラッと見ると視線を下げて小さな声で謝罪する。

「ワッハッハ!気にすんなってアーシャ。ガルダ達には俺から言っておくから。心配すんな。」

父は明るく笑い、母の背中をポンって軽く叩いて励ました。

「…。ありがと、アモン…。」

母は少しだけ頬を赤らめて小さく感謝した。

「(ねぇーねぇー、キース爺ちゃん、アリアお婆様。母ちゃんっていつもあんな感じなの?)」

俺は今日の母はあまりにも普段と違いすぎて大丈夫かと心配になりコッソリ席を移動し祖父母に直接聞いてみた。

(いや、アレだよ。あの2人の空気を壊せないよ、流石に…。)

「うふふ。(うん?リオ君、どういう意味かしら?)」

祖母は両親を見て微笑ましそうにしていると俺の言葉に首を傾げ逆に聞き返した。

「(いやさ〜。母ちゃんって俺や人がいる時は、こう、気張っていたり、父ちゃんをアンタ呼びしていて驚いたんだぁ。)」

「(ははは。あの子は変な所を私に似ていてね。)」

祖父は右手の人差し指を口元に当てて苦笑いをした。

「(ああ、昔のキースってば恥ずかしがり屋で意地っ張りですものね。うふふ。)」

祖母はそんな祖父を見て何かを思い出したのかニヤニヤと笑った。

「(おいおい、昔のことだろ?あの時の私は精神的に落ち着きが無い唯の痛い奴だったから、もう思い出させないでくれよ。アリア。)」

祖父は右手で頭を押さえて右目を閉じながら、黒歴史でも思い出す様に苦笑いをした。

「(うふふ、どうしましょうかしらね?)」

祖母は祖父が視線に入らない様に右上を向いて左手を左頬に当てて誤魔化した。

「そこの3人!聞こえているわよ!静かにしなさい!」

母は流石に聞こえていたのか顔を真っ赤にして立ち上がり俺たちに右人差し指を向けながら言った。

「ワッハッハ!アーシャ、つまりはお前が可愛いってこったな。」

父は胸の前で腕を組み豪快に笑い母を褒める。

「あ、アンタも黙る!」

母は父の方へ顔を向け注意するが、まだ顔が真っ赤である。

「へいへい、母ちゃん。これで良いだろ?分かったから少し落ち着けよ。な?」

父は両手を上げて両目をつむり首を左右に振る。母の呼び方も名前からいつもの呼び方に変えている。

「くっ!?すーっはぁーっ。師匠、今日の所は彼に任せるわ。明日はアタシも参加するからしっかり教えは内容を用意しときなさいよ。」

母は父の正論に少し後退り、立ったまま深呼吸を行う。顔の赤みは取れたが、祖父を師匠呼びしているあたりまだ、心の中は穏やかでは無いご様子だ。

「分かっているさ。その代わりアリアの相手を頼んだよ。アーシャ。」

「分かったわ。」

「それじゃあ、リオ君、アモン君少し門の外に出て行おうかな。」

「お義父さん、俺は何か持ってきた方が良いですか?」

父は母弄りから一転し真面目な表情に戻すと祖父に準備物を尋ねる。

「それじゃあ、何か適当な武器を持ってきてくれないかい?」

「分かりました、直ぐに準備してきます。東門出たあたりで集合でお願いします。」

父は立ち上がり集合場所を伝える。

「うん。分かったよ。それじゃあ、リオ君行こっか。アリア、アーシャ行ってくるよ。」

「母ちゃん、お婆様。行ってきます。」

俺達も立ち上がり母と祖父母に挨拶を行う。

「キース、アモンさん、リオ君いってらっしゃい。」

「父さん、リオをよろしくね。リオ君、アンタ、いってらっしゃい。」

「おうっ。行ってくる。」

父は俺達が第二門に向かった後に武器を取りに自宅に帰ってから東門に向かった。

 

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