幼少期の修業・魔法編1-8

探検の書

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「リオ君、ちょっと此方に近づいて来てこの火に限界まで手を近づけてご覧なさい。」

祖父は俺に左手の火属性魔力に手を近づける様にと右手で”こっちに来い”をした。

「うん、分かった。(そーっと)っ!?熱っ!えっ!?」

俺は右手をゆっくり火球に近づけると、大体15cmくらいの何も見えない空間で火で焼かれる痛みを感じ両目をつむり、咄嗟に手を引いた。

「どうだった?何か分かったかい?」

「いや、当たり前っちゃ当たり前なんだけどさ。その火球に手を近づけた時に大体15cmは離れていたのに火傷しそうな熱さだったから驚いたよ。爺ちゃんは熱くないの?」

俺は冷静に火を燃やし続けている祖父に疑問を持ち質問する。

「リオ君、正解だよ。勿論、熱いさ。魔法は例え適性の属性があったとしても使えば使う程に自身の属性魔力に傷を負うんだ。その結果、肉体は自身の属性魔力で傷を負わない為にその属性の耐性が身につくのさ。故に、リオ君も属性魔法を使えば耐性も身に付くよ。」

祖父は俺の質問に満足気な表情を浮かべ説明をする。

「なるほど、そう言うことかぁ。」

俺は確かに手の平の上で自分の魔力でできたとは言え火を燃やしていたら熱いのは当たり前だと思った。そして俺はその為に魔法を使う度に耐性が付くことを理解した。

「さっきの魔法武器を使った習得方法はこの原理を使って強制的に魔法の習得をしているのさ。自分で行っていない分時間もそれなりに掛かるのさ。大体の貴族はこの方法で身に付けているのさ。」

「ヘェ〜。そうなんだぁ。」

(それじゃ、魔法武器って強力なのを使えば接触面もダメージ大きいんだろうなぁ。戦闘中に両手を火傷って怖えなぁ。)

「おっと、話が逸れたね。えーっと、どこまで話したっけ?」

祖父は話が脱線した事に両目をつむり、右人差し指と中指で右こめかみを抑え、自分がどこまで行ったかを確認している。

「お義父さん、魔力分離の難易度ですよ。」

父はそんな祖父にほとんど間を置かず祖父に伝える。

「ああ、そうだった。ありがとう、アモン君。それでね、リオ君。魔力分離の結果抽出された魔力を無属性魔力や純魔力と言うことはアーシャも言っていただろ?」

「うん、言っていた。」

「この純魔力に先程の火魔耐性で得た火属性適性を使い、純魔力を火属性魔力に変質させる事で火属性魔法を習得出来る様になるんだ。」

「そう言う原理なんだぁ。んーっ?ねぇ、爺ちゃん、質問しても良い?」

俺は胸の前で腕を組み眉を潜め首を傾げる。

「良いよ。どうしたんだい?リオ君。」

「原理は分かったんだけど、魔力分離?と魔力変質?って他にどう言う使い道があるのかなぁって思ってさ。」

俺は魔力分離と魔力変質の習得の難易度に対してできる事が少ないと感じた為に祖父に質問した。

「本当にリオ君は良い所に気が付く。そう、魔力分離と魔力変質はここまで聞くと苦労して覚えたのに使える魔法を増やす以外使い道がない様に思える。でもね、この技能は戦闘に非常に使える技能なんだよ。」

「えっ?戦闘なの?物作りとかだと思った。」

(ぶっちゃけ、この手の技能はあるか分からないけど、錬金術とかあるか分かんねぇけど、あったらそれに使えそうって思ったけど…。違うっぽいんだなぁ。)

「勿論、その方面にも非常に使える技能だが、実際にやってみる事にしようか。アモン君、またよろしくね。」

祖父はまた父の方に体を向けて相手を頼みこむ。

「分かりました。俺は何をしたら良いですか?お義父さん。」

「私にボール系統で何か攻撃してきて欲しいんだ。出来たら融合魔法でお願いするよ。」

「ええ、分かりました。じゃあ、闇で行きますね。(タッタッタ)…。お義父さん、リオ!行きますよー。」

父は祖父の指示に従うと駆け足で再度20mくらい離れた位置に移動して、右手を上げて手を振る。

「うん、いつでも良いよ!」

祖父は開始の合図を挙げる様に左手を上げて軽く振る。

「”我願う。闇よ、闇球となり、我が右手の平から放たれよ。ダークボール”」

父は祖父が防御魔法を使う前に魔語を詠唱してダークボールを右手から放つ。

「あっ!?父ちゃん!爺ちゃんがまだアンチマジックアーマーを身に纏っていないよ!危ない!爺ちゃん!」

俺は自分よも強い事は理解しているがそれでも慌てて祖父に危険を知らせる。

「リオ君、大丈夫さ。よく見ていなさい。よっと。」

祖父は俺を一瞥して右手を前にかざすと、ダークボールが祖父に直撃せず手中に収まった。

「えっ?爺ちゃん、どうなってんの、それ…。」

俺は突然の変化に脳が処理できていない様に唖然とする。

「うん?ああ、これはね、私に当たる前に私の魔力操作で、アモン君のダークボールの制御を奪っただけだよ。」

祖父は余裕な表情を浮かべて、唖然としている俺を見て首を傾げ、思い出した様に説明する。

「いやいやいや、奪っただけって…。えぇ…。」

俺はその凄さに理解が追いつかず、顔の前で右手と顔を左右に振り現実逃避する。

「魔力操作はある程度熟すと”魔力制御”と言う名前に変化するのさ。更に魔法士の上位職業の”魔術士”の更に上位職業の”魔導士”を上限まで上げると覚えられる特殊技能”魔力支配”と言う技能があってね。魔力支配を使うと自身の魔力操作以下の魔法の制御権を奪える様になるんだ。」

「……。」

俺は祖父の説明に口を半開きになり言葉が出なかった。

「リオ君、大丈夫かい?」

祖父は固まって口を半開きにしている俺を顔を覗き込み心配する様な表情を見せる。

「あっ、うん。大丈夫だよ、爺ちゃん。」

俺はそんな祖父の行動にようやく意識が戻る。

「続けるね、このダークボールをさっきの魔力分離をしてみると、この様に2つの属性魔力に分離するんだ。更に融合魔法にする為の技能である”魔力融和”をするとこの様に再度ダークボールが完成するのさ。ここまでは良いね?リオ君。」

「スゲー!スゲー!爺ちゃん、とってもスゲー!」

俺は祖父のダークボールをまるで粘土の様に扱う姿に興奮を隠せず、飛び跳ねる様に叫んだ。

「はははっ。喜んでもらえてなりよりさ。ここから、このダークボールを純魔力と闇属性魔力に分離させると右手に純魔力の球と左手に闇属性魔力の球に分けられる。更にこの純魔力の球を私の水属性魔力に変質させると小さいけどウォーターボールを作り出せるんだ。ここまでは良いかい?」

祖父は気分を良くして笑い更に魔力操作を続ける。

「ここまでって…これ以上まだあんの?」

「うん、あるさ。ああ、それと私はここまでの過程でほんの僅かしか消費していないんだ。この意味、どう言うことか分かるかい?」

祖父は俺を試すかの様な笑みを浮かべる。

「なっ!?えっ!?まさか、ダークボールは父ちゃんの魔力を使っているから、純魔力の球を水属性に変質した以外消費無しなの!?」

俺は頭を前後に引きながら祖父の意味を理解し驚愕する。

「うん、無いよ。所詮、私がしているのは魔力操作の一つだしね。ここからでも分かる通り魔力分離や魔力変質は状況によってはかなり使える技能なのさ。難しいけどね、出来るのと出来ないのとでは天地の差があるからね。」

祖父は両手の魔力球を大気中に分解したのか、魔法を解除する。

「お見事です。お義父さん。流石はアーシャの師匠です。いや〜彼女よりも流れる様に行う人は初めて見ました。」

父は距離を縮める為に歩きながら拍手をして祖父を称える。

「うん、お疲れ様、アモン君。今日はありがとうね。さて、リオ君、今日の授業はここまで。」

祖父は父に感謝を告げると俺の方に体を向けて授業の終わりを告げる。

「えぇーっ!もう終わりなのー?もっと授業したいよー!それに魔力消費以外にもあるんでしょ〜。教えてよー!」

俺は予想以上に充実した授業にまだ続けたいと駄々をこねる。

「はははっ。喜んで貰えたら良かったよ。今日は習った事をしっかり頭の中で整理してまた、明日アーシャと一緒に修業しようね。魔力消費以外の事は私からの宿題です。明日答え合わせしようね。」

祖父は駄々をこねる俺を笑い右手で俺の頭を2,3度ポンポンと軽く叩いた。

「分かったよ、爺ちゃん。今日は授業ありがとうございました!また明日、母ちゃんと一緒にお願いします!父ちゃんもありがとうね!」

俺は背筋を伸ばし改めて祖父達に挨拶をする。

「うん、それじゃ、アモン君、リオ君、帰ろうか。アモン君、折角だし夕飯も食べていきなさい。」

「分かりました。お手数でなければよろしくお願いします。帰るぞ、リオ。」

「うん!帰ろっかー。」

俺は父の手を握り夕飯を食べる為に祖父の家に向かい一緒に夕飯を食べた。そして夕飯を食べ終えた俺たちは自宅へ帰った。

 

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