幼馴染と交流1-3

探検の書

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「いや〜マジ助かったわー! ラートもナートもリオもありがとね!」

シルルは右手で頭をかきながら笑顔で感謝する

「もうっ! シルル姉の所為で、アタイまで母さんに怒られたんだからねっ!」

メルルはそんな姉とは反対に怒る。

「マジでごめんって! メルル、許して。ね? 今度お小遣いで何か奢るからさー。アタイを許してよ」

顔の前で手を合わせるシルルは、右目でウインクしながらメルルに平謝りする。

「あはは……そう言えば、シルルちゃんとメルルちゃんって俺達が来る前まで、家の中で何やっていたの?」

「そうですにゃ。何か、アリスおばさんと一緒にやっていたみたいでしたけど、聞いても良いかにゃ?」

「オイラも聞きたいにゃっ! 教えて欲しいにゃっ!」

「っんー? アタイらは、母さんと家のお手伝いと言う名の花嫁修業をしていたんだー。なーっ? メルル」

「そうそう。花嫁修業は、こっち(イシュテリア)に引越してから色々やっていていてね。さっきまで、シルル姉と2階のベランダから、物干し竿に洗濯物を干している最中だったんだよ」

「まぁ、アタイは、去年からやっていたんだけどねー。最近は、メルルに教えながらアタイも一緒にやっては時折、母さんが指摘するって感じかな〜っ?」

前世基準でも5,6歳から花嫁修業は、早過ぎる。しかし、この世界では、平民の場合15歳で成人を迎えたと同時に結婚や飲酒などしている人も多い。

「ヘェ〜もしかして、自分の事を”アタイ”から”私”に変えていたりする言葉遣いも花嫁修業の一貫?」

「そうなんだよーっ。マジめんどー何だけどね、ああしないと母さんが五月蝿いから。ねーっ? メルル」

「そうそう。逆に父さんは、母さんと違ってあんまり言ってこないから楽なんだよねー」

「(やはり”娘達は誰にも嫁に行かせない! お父さんと結婚するんだー!” 的なやつなのかなぁ。まぁ、2人ともマジで可愛いし、厳格そうな見た目と相まって想像できるなー)」

「っんにゃ? それって……ガルダおじちゃんは、シルルちゃん達の花嫁修業に反対しているからかにゃっ?」

「それがねー前に母さんが、父さんに実家のアマゾン集落の結婚出来ない問題について熱弁してさー。父さんの心を折ったんだよねー」

「そ、それは……ガルダおじさん、お疲れ様ですにゃぁ〜……」

俺の予想とはまるで違く、ガルダの心はアリスの笑顔のプレッシャーで折られていだからだった。

「まぁ、母さんの言っている事は、アタイらもアマゾンだから何となく分かるよ。アタイらの為だって言うのも分かるけど面倒なのは面倒でね。こうして、外でなら素の喋り方で良いって言われているんだわ」

「えっ? 普通、外で話し方を逆にするんじゃ無いの? あと、アリスおばさんやシルルちゃん、メルルちゃんは滅茶苦茶美人で可愛いのに結婚出来ないなんて信じられないけど……本当なの?」

今まで見てきたアマゾンが結婚出来ない問題について俺は不思議を通り越して、冗談に聞こえた。

「おおっ? ははっお世辞でもアタイらを美人って言ってくれるなんて嬉しいじゃない。ねーっ? メルル」

シルルは少し驚き、自身の魅力に気が付いていないのか、信じられないのか照れ笑いで誤魔化している。

「そうだね。やるじゃん、リオ」

メルルは自身の魅力に気が付いているのか満更そうな笑みを浮かべている。

「お世辞じゃ無いよ! ね? ラート君、ナート君」

「んにゃっ! シルルちゃんもメルルちゃんも可愛い女の子にゃっ!」

「う、うんにゃっ……メルルちゃんも……シ、シルルちゃんも……その〜、キ、キレイにゃっ!」

俺とラートは自然に2人を褒めたが、ナートはモジモジと俯き、かなり照れながらも最後はシルルの方を見て褒めた。

「っ!? なっ!? え、ええっ!?」

シルルはナートの突然の告白紛いに顔を赤らめ酷く動揺する。

「っ! っ!?」

メルルはシルルの視線とその先を見てその事実に驚愕する。彼女は恐らく気が付いたご様子。

「ほら、嘘が言えなそうな2人がそう言っているし、2人ともお世辞抜きで美人だよ」

「(やべぇ……美人云々は事実だけど……この空気……どうしよう……収集が付かなくなった……ぐっ……マジ泣きてぇなチクショー)」

甘酸っぱい空気、俺の目の前で青春をしている2人に心で泣いた。

「あははっ。3人ともありがとね。え、えーっと……あっ! そうだ! 結婚出来ない理由を教えてなかったね!」

右手で頭をかきながら視線をあちこちに移動させるシルルは、名案を思いついたとばかりに新たな話題を出した。

「そ、そうだよ! 美人で本人も望んでいるのに出来ないなんて不思議だよ」

この空気を作り、やらかした原因である俺は、シルルの話題にこれ幸いと便乗して空気を変えようと試みた。

「母さんが言うには、アタイらアマゾンは”力”とか”信念”とか強い男を好きになる傾向が、あるみたいなんだ」

「へ、へえーっ! ふ、ふっしぎーっ!」

変なテンション、心臓がバクバクと動く音しか聞こえずテンパっていた俺は、何を言っているか自身でも把握していなかった。

「でも、そう言う男の子ってガサツな女の子より、お淑やかな女の子が好きになる傾向が強いからって言っていたんだよね」

「だから母さんは、アタイらにもそうなってほしく無いから、今のうちに訓練しておくんだってさ。大人になった時に立派な淑女になっていれば良いって事と今は慣れる事を優先しているからだっていっていたしね」

「ふぅーっそっかー教えくれてありがとね。それじゃあ、多分あと少しで広場に着くし、着いたら何して遊ぶーっ?」

空気が変わり元に戻るのを感じた俺は、深呼吸の後にシルルとメルル姉妹に感謝を伝え、今後の予定を相談した。

「そうにゃぁ……オイラは”魔物ごっこ”がしたいにゃっ!」

鬼ごっこみたいな遊びの魔物ごっこを提案するラート。

「えーっ! アタイは”盗賊と騎士”ごっこがやりたいなー」

それに顔を歪めて反対し泥棒と警察みたいな遊びの盗賊と騎士を提案するシルル。

「それなら、両方しませんかにゃっ? どっちかを昼ごはん食べた後にするとかどうですかにゃっ? メルルちゃんはどう思うかにゃ?」

一触即発の空気で睨み合う2人の仲裁を行うナート。

「アタイも〜ナート君にさんせー。リオ、アンタは、どうしたいの?」

「俺っ? 俺もナート君とメルルちゃんの意見に賛成だよー」

俺とメルルは中立の立場であるナートの意見に賛成する事で、2人の話し合いが始まった。

「そ、それじゃ、最初は、どっちからやりますかにゃ?」

「魔物ごっこにゃっ!」

「騎士と盗賊っ!」

ラートとシルルはお互いに自分の意見を譲ろうとしない。

「ま、まぁラートもシルルちゃんも落ち着こうね」

メルルはナートが2人を仲裁している時に俺の手を引いて少し離れた所で小声で喋った。その際ラートと目が合い彼は何故か頷いた。

「(ねぇ? リオ、ちょっとこっちに来なさい)」

「(メルルちゃん、何か用事?)」

「(リオ、さっきのナート君の反応だったんだけど……あれってもしかし無くても、ナート君ってシルル姉の事が好きだよね?)」

「(あっ流石に気が付いていた? 実は、俺もメルルちゃん家に行く前に知ってさ……俺も何とかナート君の応援にって話を振ったら)」

「(ああなったと……ほんと、やるじゃん、リオ)」

「(いや、正直言って余計なお世話じゃねぇかと思ったよ。だってさーさっきまで”俺たち3人の秘密な!” ってやっていたのに、ほとんど自分から暴露した様なものじゃん……アレって)」

「(ほんとねー。シルル姉は自分を可愛いって思っていないみたいでね。さっきもお世辞かどうか疑っていたんだよ。でも、アレはビックリしたね)」

「(しかもさー、ラート君も俺達のこの状況をチラッと見て、理解したのか時間を稼いでくれているっぽいんだよね)」

「(えっ嘘っ!? 本当にっ!?)」

「(本当、本当。さっき目があって頷いていたし。やっぱりナート君の兄だよ。俺、あの2人に男として一生勝てる気しねぇよ)」

「(アンタもアンタで大概だけどね)」

「(まぁ、それは置いておいてメルルちゃんって……ナート君の事を好き?)」

「(“友達として”なら好きよ)」

「(それならさ、できる限りで良いから協力をお願いしても良いかな?)」

「(勿論だよっ! シルル姉の為だし、アタイも協力するよ)」

「(よろしくね)っと3人とも! 話はもう終わった? これからどうすんの?」

「んにゃ〜。リオ君、それがまだなのですにゃ」

ナートは意外と時間を稼ぐラートに困り果てる。

「それじゃ、取り敢えず早めのお昼食べてからにしない? 俺、なんかお腹減ってさー。ダメ?」

「はぁーっ。しゃーねぇなぁー。ラートもそれで良いい?」

「しょうがないにゃっ! リオはまだお子様にゃっ! ついでに、オイラも小腹が空いたにゃっ!」

「ラート……絶対最後のが本音だにゃっ……」

俺の提案で急遽早めの昼飯買いに変更した。

 

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