「にゃ、にゃあっ!? リオ君のお爺ちゃん、ほ、本当にBランク……冒険者……にゃの?」
ラートが驚愕し声を震わせる。
「まぁ、俺も確認は出来ていないけど爺ちゃん本人も婆ちゃんや父ちゃん、母ちゃん達全員が言っていたよ。そもそも、どうやって本当にBランク冒険者かを確認すれば良いか分かんねえし」
「そ、そう言えば……父さん達が、こっちに引っ越しする時に”自分達の憧れの凄い人が居る”って言っていたよね!? メルル!」
「そ、そうだよっ!? シルル姉! うわー! Bランク冒険者って、本当に実在するんだーっ!?」
「Bランク冒険者って言えば、物語の伝説の勇者ギルバート・ゼルグレイ様の次に強いですにゃっ! リオ君が羨ましいですにゃっ!」
珍しく恥ずかしい以外でこんなに赤面しているシルルとメルル、ナートはとても興奮している。
「えっ? ナート君、ごめん。ギルバート・ゼルグレイ様って……誰? 爺ちゃん位強くて有名な人って事しか分かんないけど」
「にゃっ!? リオ君、ギルバート様知らにゃいの!? 嘘だにゃ!?」
その勇者様は如何やらかなり有名の様だ。
「あぁ〜ごめんね……ラート君、俺さ諸事情があって父ちゃんと母ちゃんが冒険者だって知ったのがこっちに引っ越す直前なんだよ。俺、それまで父ちゃんと母ちゃんが冒険者だって知らなかったし」
「ええ〜リオ、それってどんな事情なの〜?」
残念なものを見るようにメルルは俺の事情を聞いてくる。
「言わなきゃダメ?」
「ダ・メ」
俺はメルルがしつこく聞いてきたので仕方なく答える。
「はぁー俺も会ったことは無いけどね……俺が生まれる前に兄が居たんだけど、流行病で死んじゃったらしくてね……それ以来、引っ越し直前まで俺が危険な事をしない様に冒険譚とか教え無い教育方針だったってさ」
俺たちはさっきまでの空気が固まる感じた。
「(あっやっぱりそうなるよな……俺自身会った事ないから悲しみとか無いし、別に隠す事でもないから言ったけど……そうなるわな。この空気を変えるには、聞いてきた本人をイジって茶化して誤魔化すか……俺が原因みたいな物だし)」
右手で頭をかき突然重くなった空気をどうするか迷った俺は一つの結論に辿り着いた。
「あ〜なんか、メルルが変な事を聞いてごめんなーリオ」
シルルはメルルの代わり俺に謝ってくる。
「全く、本当だよ。あ〜あ、さっきまでの空気が台無しだよーメルルちゃん、どうしてくれんの〜」
俺はニヤニヤ笑いながら怒っているような困っているような態度でメルルに迫り近づく。
「ご、ごめん……アタイ、そんなつもりじゃ……」
メルルもただの興味本位だったからこんな空気になるとは思っておらず責任を感じ目に涙を滲ませていた。
「これはお詫びが必要だな〜だから、今度2人でデートしようぜ、メルルちゃん」
俺は笑顔でメルルの顔を向いて左目をウィンクする。恥ずかしいけど自分で壊した空気だから全力で直すために頑張った。
「っ!? くっあはは……アタイは、リオと2人でデートは嫌かなぁ……たから、みんなで歩いた時にまた手を繋いであげるから、それで許して? ね?」
メルルは自分が揶揄われていることに気がつき徐々にいつもの調子を取り戻す。
「えぇ〜メルルちゃん酷いな〜ま、それで勘弁してあげるよ」
自分でもキャラが合っていない事を自覚している為に少し赤面する俺は兎に角笑顔で乗り切った。
「そんときゃ、アタイもメルルと一緒に手を繋いでやんよ、リオ」
「ヨッシャーッ! 次も両手に花だぜ! ラート君、ナート君、良いでしょ〜?」
ライザルにやってみた様にラートとナート兄弟に向けて俺は美人姉妹に繋がれている両手を見せびらかす様に自慢する。
「にゃはははっ! 良いにゃ〜リオ君」
大声で笑い年下の弟を見る様にラートは俺の頭を撫でる。
「羨ましいですにゃ……リオ君……」
兄のラートと対してナートの表情は少し険しく嫉妬していた。
兎も角俺とメルルが引き起こした重い空気は、完全に払拭した。
「おっ? みんなあれじゃね? ライザルさんが言っていたバルサガン果物屋とリンネルさんのパン屋さんって? 看板が隣り合っているし、きっとそうだよ。早く行こうぜ!」
人混みで判断は付かなかったが、赤と緑と黄色いの3色の果物らしい丸い物が描かれた看板とフランスパンみたいに長いパンと食パンの様に四角いパンが描かれた看板が隣り合っている事が見えた。
「こんちにゃー! ここはバルサガン果物屋ですかにゃ?」
「おう! そうだぜ! お前らは、お使いか?」
白髪オールバックの40代前後の恰幅の良い男性がバルザガン果物屋から出てきた。
「俺は、ライザルさんの友達のフィデリオです! 俺達は、ライザルさんのツケで果汁水をもらいに来ました!」
「アッハッハ! そう来たか! だが、まだ信用するわけにはいかねぇな……奴は、それ以外に何か言っていなかったか?」
俺達は当たり前だが信じては貰えない。そのために彼が苦笑いして呟いていた内容について話す。
「姉であるリンネルさんが、パン屋を開店したから何か買っていってくれって言ってました。自分の冒険者の夢を応援してくれたからって」
「アッハッハ! それなら本物だな。ヨシッ! どうせあいつのツケだ! いっぱい飲んでいけ! 何にする?」
「折角だし一番高いヤツくださーい」
ニヤニヤと笑いながら俺は悪ノリで店主に注文を頼む。
「(どうせ、ツケだし、多分大丈夫だろ。高過ぎたら……どうするかなぁ……後で謝るか)」
「アッハッハ! お前、分かっているじゃねぇか! お前らもそれで良いか? それで良いよな! よし、それで決定だ! そうと決まれば、ちょっと待ってろ!」
「「リオ君と店主さん、ノリノリにゃ……」」
双子は珍しく呼吸を合わせて呆れる。
「リオってば、ひっどーい!」
俺を咎めているのか笑っているのか分からないメルルは、悪ノリに乗じている為に表情と言葉が一致していない。
「おっちゃん! アタイらもリオと同じでお願ーい!」
シルルは純粋に喜んでいた。
「その分、リンネルさんの店で買い物すればきっとチャラで許してくれる……と思いたい。それにライザルさんは、器が大きいから多分大丈夫、大丈夫」
店主は店の奥に行き、少し待つと店の奥からお盆に乗った果汁水5つを持って出て来る。
「おう! お前ら待たせたな! 迷宮産のマゴンとリゴン、モロンで作ったバルサガン特製果汁水だ! 持っていきな」
「ちなみに、本来ならどのくらいの値段なの?」
「そうだな〜全部迷宮産だし……全部1個ずつ使って……マゴンが150R、リゴンが40R、モロンが200R、コップ代が10Rだから1本合計400Rだな! それが5本だから合計2,000Rだ」
「くっくっく。それじゃあおっちゃん、ライザルさんにツケといて!」
「アッハッハ! おう! 毎度あり!」
俺は予想以上に高かったから、今度あったら全力で謝っておこうと思い店を出た。
「それじゃ、今度はパン屋に行くにゃ!こんちにゃー!」
「こんにちは! パン屋”ベルディング”にようこそ! いらっしゃい!」
白髪短髪で赤い布を頭に被せて、黄色い半袖に膝丈よりも長い紺色のハーフパンツ、緑のエプロン女性が出てきた。
「こんにちはにゃ! 焼肉を挟む用のパンを買いに来ましたにゃ!」
「毎度! 如何する? 四角いパン2枚で挟む感じと長細いパンの真ん中に切れ込み入れる感じがあるけど、どっちにする?」
「みんな、折角だし長細い奴にしようよ?」
「「さんせー!」」
「さんせーにゃ!」
「と言う事ですにゃ。お姉さん、長細い奴でお願いしますにゃ」
「毎度! 5本で100Rになりまーす! 袋は如何しますか?」
「つけて下さい」
「それじゃ値段が変わって合計で110Rになりまーす!」
「110Rですにゃ」
「それじゃ、ちょっと待っていてねー!」
俺達はパンを買っている間他のパンを見ていた。
「ヘェ〜色々なパンが売っているね〜シルル姉、遊び終わったら、おやつ用にまた来て何か買って行こうよ!」
「メルル、それ良いな! みんなも買おうよ!」
「それなら、俺、この”レゾンパン”ってやつを買いたい!」
俺の買おうとした”レゾン”とは”レーズン”みたいな果物が入ったパンである。
「それじゃあ、僕はこし餡パンにしますにゃ。」
「オイラは粒餡パンにするにゃ!」
双子の選んだ餡パンは前世でも同じ小豆を使用している。
「アタイは〜”イデオジャムパン”にする〜シルル姉は?」
「アタイは、”ブディジャムパン”にする」
メルルが選んだ”イデオ”は”イチゴの様に赤い果物”で、シルルが選んだ”ブディ”は”ブルーベリーの様な青い果物”のジャムである。
「お待たせー! はい、どうぞ」
「お姉さん、お金前払いしておくんでパンを後から貰いに行くのって出来る?」
「えーっと、そう言うのはやっていないかなぁ……どうして?」
「オイラ達、そのパンに焼き肉を挟んで食べるにゃ!その後、遊ぶから荷物が多いと困るにゃ! でも他のパンも食べたいにゃ!」
「遊びが終わるのは夕食前の鐘が鳴る頃ですにゃ。どうにか出来ませんかにゃ? お願いしますにゃ」
「うーん…々普段はやって居ないけど、そう言う事情なら前払いなら良いよ。しっかり遊んできなさい」
「ありがとうございます! 流石、ライザルさんのお姉さんだ。器が広い!」
「えっ? 君たちウチの弟の知り合いなの?」
リンネルは家族の弟と知り合いだと知らず驚く。
「俺はライザルさんの友達のフィデリオです」
「まあまあ、君がフィデリオ君ね! 最近弟が君の事を話していたわ。それじゃ、預かっておくからどれにする?」
俺達は各自一つずつ選んだパンを指差して伝えた。
「レゾンパン40R、こし餡パン25R、粒餡パン30R、イデオジャムパン25R、ブディジャムパン30Rの5点で合計150Rになります」
「はいにゃ、150Rにゃ」
「毎度! それじゃ待っているわ」
「お願いしますにゃ!」
「「「お願いします!」」」
「お願いするにゃ!」
俺達は店を出て肉屋のある方に向かう。
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