幼馴染と交流1-7

探検の書

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「いや〜っ。言ってみるもんだね。リンネルさんが優しくて良かったよ。」

「そうですにゃ。(ゴーンッ。ゴーンッ。ゴーンッ)もうお昼の鐘が鳴りましたにゃ。みんな!人が混み出す前に早く行きましょうにゃ。」

昼食の鐘はベルディングを出てすぐの所で鳴り始めた。

「「さんせー。」」

「「おーっ。」」

「みんな!今は荷物があって片方の手を繋いでいないにゃ!迷子になったら危ないからお互いに荷物を持っている腕を握るにゃ!ナート!オイラと一緒に肉屋に着くまで警戒するにゃ!」

「分かってるにゃ!ラート!そっちこそ急にどっかに行くにゃよ!」

俺達は逸れないように両端にいる年長者のラートとナートが警戒しながら人混みを進む。この時間帯はどの店でも人の出入りが激しく周囲も少しずつ喧騒した雰囲気が漂うが、俺達は幸いな事に誰も逸れる事なく魔物肉屋の出店にたどり着いた。

「らっしゃい、らっしゃい!ここは魔物肉屋の出店だーっ!仕事疲れに心と体を癒すなら肉が1番だ!さぁ!さぁ!寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!ここは肉の中でも高級品の迷宮産の肉が手頃な値段で食べれるぜー!なんでこの値段で提供出来るかだってぇ?それは切り落とした時に商品になら無ぇ部分を安く売っているからさー!今食べないと後悔しても知らねぇよ!」

短い白髪で両手には手袋、首にはタオルを巻いている30〜40歳くらいのおっちゃんが声を張り上げて宣伝活動をしていた。

「おっちゃんっ!アタイらに肉をくれ!」

シルルはそんなおっちゃんに注文する。

「おうっ?なんだ、なんだ。悪りぃな嬢ちゃん達、坊主達。こちとら商売でやってんだ。冷やかしならとっとど帰んな!」

しかし、俺達は肉屋のおっちゃんに恐らくこの商品を買えるだけのお金を持ってないと判断されたと思われ拒否される。

「オイラ達はお客にゃ!」

「そうですにゃ!ガルザさんの紹介で来たのでお金もあるですにゃ!」

「あんっ?親方の紹介?んなもん信じられっかよ。坊主達、何か証拠でもあるんなら出してみろ。ほれっ、ほれっ。」

おっちゃんはラートとナートの反論にも信用せず証拠を求めるので俺はガルザから預かった骨を袋ごと彼に渡す。

「おっちゃん!はい、ガルザさんから預かった魔物の骨です。」

「あんっ?お、おぉ!コイツは、この匂いは最近入荷したチャージホースの骨じゃねえか!」

「信用してくれました?と言うか、匂いで分かるもんなんですか?俺にはさっぱり分かんねぇわ。」

おっちゃんは骨を受け取ると中から袋から骨を出す。そして目を見開き骨の匂いを嗅ぎ出し俺たちが信用できる客であると認めた。

「ああ、すまねぇ。坊主達への非礼を詫びるぜ。本当にすまねぇな、坊主達、嬢ちゃん達。」

おっちゃんは自身の非を認め、子供の俺ら相手でも頭を下げる

「えぇ〜っ。アタイ達〜ガルザさんの〜紹介で来たのに〜シルル姉〜怖かったよ〜え〜ん、え〜ん(チラッ)」

メルルはそんなおっちゃんにニヤッと笑ったかと思うと俺でも分かるくらいの大嘘泣きをしシルルに飛び込みおっちゃんをチラ見する。

「ぶふぅ!」

俺は突然な事で耐えきれず吹き出すとそれを見たシルルらがニヤッと笑い始めた。

「アタイの妹が泣いちまったじゃ無いかっ!一体どうしてくれんだい!」

俺達は文面上は怒鳴ってはいるが完全に悪ノリである。

「えーん、えーん?(チラッ)ラート君、ナート君、この顔の怖いおっちゃんが虐めるよー(チラッ)。えーん、えーん(チラッ)」

俺も何事もなかったようなその場でしゃがみ棒読みで嘘泣きを行う。

「ちょっと待てよ、坊主達。特にそこの茶髪のお前。」

「俺?」

おっちゃんは頭を抱えながらも俺を指さす。

「そうお前だ。」

「俺がどうしました?顔の怖いおっちゃん。」

「たくっ。あからさまにも程があんだろ。と言うかお前笑い堪えてから、もちっとそこの嬢ちゃんら見習え。はぁーっ。分かった、分かった。俺の負けだ。親方には黙っててやっから特別に赤字覚悟で半値で売ってやんよ。それで勘弁してくれ。な?」

「あっ、言い忘れていた事だけどガルザさんからの伝言で既に半値で売ってもらえるんですよ。」

「はあっ!?」

おっちゃんは半値ですら原価割れしかねないのにその半値になり赤字になると驚愕する。

「と言うことは半値の半分ですにゃ。おじさん、ドンマイですにゃ!」

俺はこんな悪ノリしたナートは初めて見たが彼の表情は満面の笑みだった。

「カァーッ!俺の完敗だ。持ってけ泥棒!」

おっちゃんは左手を腰に当てて右手で右こめかみ付近を何度か掻いて、悔しい表情から開き直った表情を浮かべる。

「それとさっきの骨はガルザさんからおっちゃんにあげるそうだから、そんなに落ち込まないにゃ。にゃははは!」

ラートは慰めているのか憂さ晴らしに笑っているのか分からないが楽しそうだった。

「クッソ〜ッ。本当ならスゲェ嬉しいのに腹立つなぁっ。」

おっちゃんは忌々しそうに俺たちを睨んでいるが、同時にとても嬉しいのか口角が上がり、それに伴い目も優しくなる変顔になっていた。

 

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