幼馴染と交流1-5

探検の書

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「おっ? よぉ! リオ坊じゃねぇか!」

俺達は大通りを歩いていると何処からか俺を呼ぶ声がした。

「んっ? 俺の事誰か呼んだ?」

「リオ君、あそこの肉屋に居るおじさんにゃ。知り合いかにゃ?」

「おっ? よぉっ! 肉屋のおっちゃん! 肉切り包丁の調子はどう?」

ラートが左に指差すので振り向くと祖母の常連である肉屋の主人が俺を呼んでいた。

「ガッハッハ! 流石ミンクさん所の包丁だ! よく切れているぜ! それより、今日は友達と買い物か?」

肉屋の主人は人間種パーソン族と思われる見た目でスキンヘッドに赤いねじれ鉢巻を身につけている。

口と顎には白色の短い髭があるが、高齢ではなく30代後半くらいの見た目で腕にいくつもの切り傷がある屈強の男性だ。

服装は黄色い半袖に緑のハーフパンツ、その上にベージュっぽいエプロンに所々赤い血のシミがあるが、意外にも笑顔がチャームポイントでその見た目を和らげている。

「遊ぶ前に昼飯買いに来たんだ! どっか美味くて安い店とか知ってる?」

俺はこの辺に店を構えているならお勧めな場所を知っていると言う偏見から聞いてみる。

「おうともっ! お前ら肉は好きか?」

「「好きーっ!」」

「好きにゃっ!」

「好きですにゃっ!」

「大好きだよ!」

俺達は突然であったが、常連のおっちゃんに肉好きである事を示す。

「ガッハッハっ! なら、ここを少し歩くと魔物肉の切れ端を焼いている俺ん所の従業員が出店やってんだ。ソイツにコレを渡してくれ。ほれ」

俺は肉屋の主人から紐付きの大きな袋を投げ渡される。

「おっとっと……おっちゃん……コレは……骨?」

俺は中身を見ると所々に肉片がついた骨が入っていた。

「おうっ! 魔物の骨は、良い出汁が出るから料理店相手に高く売れるんだ。肉を焼いているソイツはいつも欲しい、欲しいって言っていたし、それを渡して”ガルザが特別に半値で負けてくれた”って言えば通じるから、たくさん食っていけ」

「えっ!? 半値もっ! ありがとう! おっちゃん、行ってみるよ!」

「「おじさん、ありがとー!」」

「おっちゃん、ありがとにゃ!」

「おじさん、ありがとうにゃ!」

魔物肉屋の主人ガルザが、特別価格で売ってくれる魔物肉に俺達のお腹は、空腹のサインを鳴らしながら最大限のお礼の言葉を送った。

「おう、気にすんな! それとリオ坊! ミンクさんによろしく言っておいてくれ! んじゃなっ!」

俺達はガルザと別れた後も散策していると直ぐに違う人に声を掛けられた。

「よぉ! 鍛冶屋の孫のリオ坊! 今日は、友達と買い食いでもしに来たんか?」

「おっ? こんにちは! 冒険者のライザルさん。ライザルさんも仲間と買い食いに?」

「(今日はやけに知り合いから声をかけられるなぁ。まあ、いっか。そういや俺、ライザルさんの友達? 仲間? 見るの初だ)」

「うん? ああ、俺らは、これから迷宮入りさ。それより〜両手に女とかリオ坊もやるじゃねぇか! ん〜?」

「ハッハッハ! 良いでしょ〜両手に花だよ! それも美人姉妹と来た! 正に男の夢だよ!」

両手に握った手を頬に持ってくるようにする俺はライザルに見せびらかすように自慢する。

「ぷっくっく……まっリオ坊よりも両端の坊主共の方が女の子達に釣り合ってるわ。お前じゃ良いとこ兄、姉離れ出来ずに無理やり参加した駄々っ子にしか見えねぇがな」

俺の冗談に腹を抱えるように笑うライザルは客観的に見える俺の立場を言葉にする。

「うん、まさにそれね! 今日は、俺ら5人で広場で遊ぶからその前に昼飯を買いに来たんだ」

「それで、何食うんだ?」

「ガルザさん所の出店で肉食うんだ。本人が俺達だけに特別に半値で良いって」

「あそこか〜あそこは美味いぞ。たけど、肉を食うなら飲み物が必要だろ? 出店に向かう途中に俺の実家のバルサガン果物屋って言っていてな。果物水を売っているから買って行けよ」

「えぇ〜奢ってくれないの〜! ねぇーお願い!」

手を繋いでいる両手を離した俺はそのまま手を合わせてライザルに強請る。

「分かった、分かった。果汁水は俺のツケで良いからその代わりに隣のパン屋でパンを買って行けよ」

「えっ? まあ、果汁水を奢ってくれるから俺は良いけどなんで?」

「おう、そのパン屋は俺の姉のリンネル姉ちゃんの店なんだ。それに焼肉は、パンと一緒に食べると美味いって相場が決まっているしな!」

ライザルは見た目の遊んでいるチャラ男感があり誤解される事もあるが基本的に女子供の面倒見が良い。

「みんなーライザルさんがこう言っているけど、どうするー?」

「オイラも食べたいにゃ!」

「アタイは良いよー」

「アタイもシルル姉にさんせー」

「僕も折角だし食べたいですにゃ」

「という事だし行くよ」

俺の知り合いとは言え他4人は赤の他人である事や団体行動中にリーダーでも無い俺が勝手に決める事もおかしいと思い、グループの総意を聞いた。

「そうか、そうか。リンネル姉ちゃんの店、開店したばっかだからまだ知名度が足んねえんだ。お前ら子供が行ってくれれば客も出入りしやすくなるかも知れねぇし良かったわ」

「ライザルさんって相変わらず優しいね」

「まっ他人が如何なっても知った事じゃねぇよ。だけど、両親が俺の冒険者の夢を反対している時にリンネル姉ちゃんだけが応援してくれたからな……なら、弟としても男としても、この恩を返さねぇと筋が通らねぇだろ。そんだけだ」

ライザルは腰に両手を当て苦笑いする。

「それじゃ、俺達はもう行くね。ライザルさん、果汁水ありがとうね!」

「ライザルさん、ありがとにゃ!」

「ライザルさん、ありがとうございますにゃ」

「「ありがとーライザルさん」」

「おうっ! お前らも気い付けろな」

ライザルは仲間と共に迷宮に向かった。

「にゃぁ〜それにしても周りには、人が多くて活気があるにゃあ〜にゃあ? メルルちゃん」

「そうだね〜アタイもそう思うよ〜ラート君」

「それにしても、リオ君は、顔が広いですにゃ。色々な人に話しかけられていて僕は驚いたにゃ。にゃあ? シルルちゃん」

「そうだねーリオって実は、凄いんだな」

「んー? そうでも無いよ。ほら、おっちゃんやライザルさんは、良く婆ちゃんの店に来る常連だしね! 店の手伝いをしていると良く構ってくれるんだ! だから、別に俺が凄いって訳じゃ無いよ! 本当に凄いのはあんなに信頼されている婆ちゃん達だよ」

「リオ君は、お婆さんを尊敬しているのですにゃ」

「勿論さっ! 俺もいつか父ちゃん達みたいな冒険者になって婆ちゃんの店で装備を整えるのが今の目標なんだ! ナート君達も何か用があったら是非来てよ! 本当に凄いからさ!」

「でも〜リオに武器の良し悪しとか〜分かるの〜?」

メルルは少し疑いの目を向けながら俺に質問してきた。

「あはは! 全然分かんないよ! でも、俺の爺ちゃん”Bランク冒険者”御用達の店だよ。悪いわけねぇじゃん」

俺は多分みんなが知らない身近にいる偉人がいると言う秘密を暴露した。

 

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