幼少期の修行・身体編 1-2

探検の書

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「それじゃあ、最初は柔軟体操から始めるぞ! リオ、地面に座って、股を開いて両足を伸ばせ」

 俺は祖父に指示される通りストレッチを行なっていく。

「おっ? なんだ? リオ、中々、関節が柔らかいな! これなら、ちょっとキツくやっても……大丈夫そうだな! ていっ」

 俺は普段の日課とアルバイトで動く前に準備体操やストレッチを行なっているからか、前世よりも柔らかい自信はあった。

 しかし、そんな自信に満ち溢れている俺の表情に祖父は悪戯を思いついた時の子供の様な表情で笑った。

「ああああぁぁぁぁっ! 痛い痛い痛い痛い痛いっ!ちょっと〜!? 爺ちゃん! タンマ! タンマ!」

 俺は開脚の限界を行うと直ぐに俺の限界に達した股が裂けそうな激しい痛みにたまらず声を上げた。

「ハッハッハ! まだまだ、大丈夫そうだな! ほれっほれ〜!」

「ぐおぉぉ〜っ! 股が〜! 尻が〜! 裂ける〜!」

「大丈夫だ。尻は最初っから避けている」

「冷静にツッコミ入れないでよ! いたたたたっ!」

「おっ? 流石にこの位が限界か……なら、少し緩めてるぞ! 大丈夫そうなら言ってくれ」

 祖父は流石に悪ふざけし過ぎたらしく、俺の痛々しい声に限界が伝わり、開脚の角度を少し緩めた。

「爺ちゃん! もう大丈夫だよ! ああああぁぁぁ。……少し痛いけど、しっかり伸びて……気持ち良い……」

 俺はマッサージの時に感じる、その痛気持ちいい感覚に少し耽っていった。

 その後は一通り柔軟体操を行い、軽く筋肉と体感を鍛えた。内容は腹筋、背筋、腕立て伏せ、スクワットを10回2セット。体幹トレーニングは数えで1分2セットである。

「はぁーっはぁーっ! 爺ちゃん! 俺は、はぁーっ! まだまだ、出来るけど、これだけで良いの?」

 俺は体が暖まり、頭から滝の様流れる汗を右の袖で拭いながら、祖父に挑発的な笑みを浮かべた。

「ハッハッハ! 元気なこった! だが、初日から飛ばしても良い事はねぇからな。日を追うごとに増やしていけば良いんだよ。特にお前ののような子供には、な?」

 祖父は無理すんなと言わんばかりに俺の頭を撫でた。

「すぅーっふぅーっ……そっかー。そうだよね。分かったよ、爺ちゃん」

「(確かにそうだ。初日に飛ばして続けられなくなるくらいなら、段々慣れていった方が良いって事だな)」

 俺は祖父の心配を素直に受け止めた。

「よし! 次は軽く走り体を温めるぞー! 少し変な動きになるが、両腕や関節を動かしたり、飛び跳ねたりして走ってみろ! その方が身体全身を使うから怪我しにくくなる!」

「良いけど、どこまで走るの?」

「おう! 現在地点の第一門付近壁伝いに向かい第三門までの間だな」

 王都イシュテリアには第一から第四の門がある。方角は王城の正面玄関が北向きに造られており、それぞれ対応した名前がある。

 王都第一門は別名正門と呼ばれ北門に位置している。

 王都第二門は別名右門と呼ばれ東門に位置している。

 王都第三門は別名左門と呼ばれ西門に位置している。

 王都第四門は別名裏門と呼ばれ南門に位置している。

「分かったよ! 爺ちゃん」

「そんじゃあ、いくぞー!」

「おーっ!」

 俺と祖父は走りながら両腕をグルグル回して肩をほぐしたりハイニースキップや両足をクロスステップすらカリオカなどを行った。

「ぜぇっぜぇっ! んぐっふぅーっはぁーっ!」

「おう! リオ、お疲れさん。よく走った、偉いぞ。一旦、休憩を入れるからこれでも飲んでおけ!」

 俺は日課のランニングのお陰で倒れはしなかった。しかし、予想を遥かに超える距離を走り呼吸が乱れ、身体の熱を冷まそうと身体中から汗が吹き出した。

 そんな状態の俺に祖父は、何処からか取り出した木製の水筒に入っているリゴン水を渡した。

「はぁ……はぁ……ありがとう……はぁ……爺ちゃん……っぷはーっ! うめー! 生き返る! このリゴン水って甘酸っぱくてとても、美味しい! 爺ちゃん、ありがとう!」

「おう! みっちゃんに感謝しておけよ。俺も簡単な料理くらい出来る。だが、こう言うところまでは気が回らなくてな。だから、みっちゃんが昼飯以外にも水分補給の水筒を用意してくれた」

 祖父は右手で頭を掻き左手で腰に手を添えて言った。

「分かったー! 帰ったら感謝しておくよ!」

「おう! そうしとけ。それともう休憩は大丈夫か?」

「なんか、リゴン水飲んだら疲れが取れた! だからもう大丈夫だよ!」

 俺は普通と言うか、日課でこれだけ走れば呼吸が整っていても必ず肉体疲労が残っていた。しかし、このリゴン水を飲んでからは、不思議と体が軽くなった感じがした。

「そいつは、俺ん家に代々伝わるリゴン水のレシピで作った奴だ。少量だけど薬草とハープが入っている」

「あっ!? そう言えば確かに、少しだけ喉がスースーする……かも?」

 俺は肉体疲労感が回復した為に、頭の中が冷静になり、リゴン水に小さな果肉と爽やかな喉越し感を理解した。

「薬草は”癒し草”って植物が使われている。主に回復薬”ポーション”の原材料が使われているんだ。それと喉がスースーするのは、はっか草って言うハープだな」

「2種類の植物を使っているのか」

「癒し草とはっか草、リゴンを細かく切り少量の蜂蜜をかけて炒めて、お湯で煮ると出来上がりなんだ」

「手間暇掛かっているんだねー」

「そうだなぁ……このリゴン水は、傷を癒す事は出来ないが肉体疲労なら少しばかり取ってくれる。それに、美味いから修業時には重宝しているんだよ。リオもよく覚えておけよ」

「うん! そうするよ」

「さて、修業続行だ! 準備は良いか? それじゃあ、いくぞー!」

「おーっ!」

 俺は十分な休憩と修業用特製スポーツドリンクのおかげで元気になった俺は右手をグーにして頭の上に伸ばした。

 

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