「それでは、皆さん御登録お疲れ様でした。これより、冒険者ギルドの説明に入ります。」
アスランさんは俺達に労いの言葉をかけてから、冒険者ギルドの概要説明を行なった。
「まず始めに見習い冒険者制度についてご説明させて頂きますね。此方の制度では本来、冒険者登録が可能な年齢である15歳になる前から仮登録ができる制度にございます。また、この制度を活用する場合最低2年の見習い期間が必要です。その為に、この制度を利用できるのは13歳以下の方で保証人にHランク以上の方がいらっしゃる場合のみにございます。その為に皆さんはこの条件を満たしていますので承認いたします。ここまでで何か質問はありますか?」
アスランさんは説明を一度に全て行わず質疑応答を行ってくれるようだった。
「それでは、質問しても良いですか?」
俺は最初に質問するべく手を挙げた。
「はい。フィデリオ君、何ですか?」
「さっきアスランさんは俺達見習い冒険者を仮登録扱いと言っていました。という事は、何か正式冒険者よりも制限があるですか?」
俺はアスランの”仮登録”と言う言葉に制限があると仮定して質問した。
「フィデリオ君、良い質問ですね。はい、勿論制限はあります。基本的に皆さんが仕事を行えるのは庭の草刈りや買い物の代行、溝掃除など所謂”雑用”になります。Iランク冒険者ですとこの雑用の他に護衛、迷宮探索などが出来ますが、今のあなた方ではこれらは出来ませんので注意してください。はい、ラート君どうぞ。」
(なるほど、言わば俺たちは正式冒険者ではなく、準冒険者扱いみたいなものか。)
言うなれば見習い冒険者制度とは前世で言うところのインターンシップに該当するのである。そう思い俺が頷き整理していると左隣のラートが手を挙げる。
「はいにゃ、もしオイラ達が勝手に護衛や迷宮探索などをギルドに通さず行ったらどうなるっすかにゃ?」
「勿論、罰則があります。初犯は程度に寄りますが厳重注意になると思います。しかし、場合によってはギルド証の剥奪、最悪の場合ギルドの信用毀損で訴える事になります。また、あなた方の保証人であるご両親にも何らかの罰則が与えられます。その為に絶対に行わないで下さい。ナート君、どうぞ」
アスランはとても怖い表情で俺たち全員を見て話しナートを指差し指名する。
「はいにゃ、先程アスランさんは”今の僕達では出来ない”と言っていましたにゃ。という事は今後の活躍次第ではできるって事ですかにゃ?」
「はい、勿論です。今後の活躍や依頼者の総評価や指名依頼の数による実績などを鑑みて判断しますが可能です。その為にズルをしない活躍を期待しています。シルルさんどうぞ。」
「アタイが仮に活躍して迷宮探索が出来るとして、攻略の情報とかってギルドで扱っているんですか?」
「勿論です。その時は情報によってお金を払って頂きますので注意してくださいね。」
シルルの質問にアスランは笑顔で返す。
「う”っ。金取んのかよ〜。」
シルルは情報を得る対価としてお金が必要であると知ると顔をしかめて、残念そうに頭を”ガクッ”と下げた。
「当たり前です、シルルさん。情報とはそれだけ重要という事です。はい、メルルさん。」
アスランは笑顔から一転し真面目な表情で情報の大切さについて話し手をあげているメルルを指差した。
「つまり〜アタイ達が何か新しい情報を手に入れた時は、その情報をギルドで買ってくれるの〜?」
メルルは姉とは違い両手を後ろに組み、アンランに上目遣いで質問する。
「勿論買い取ります。なので何か異変があれば随時報告してください。その情報の正確性を確かめた後に情報料を支払います。また、被害が出る様な重要な情報を事前に報告していただければ情報料以外にも感謝料をお渡しします。それでは説明を続けますが、みなさんは優秀ですね。質疑応答で説明のほとんどを解消しました。その為にほかの説明に入ります。」
どうやら俺達は優秀な部類のようだった。
(まぁ俺は前世があるから分かるが、改めて思うんだがみんなして精神が早熟してすぎないか?俺の前世の8〜10歳はもっと頭悪かったような気がする。)
「それでは最後に残りの部分について説明いたします。先程も申し上げましたが皆さんの活躍次第ではIランクと同等の扱いになると言いました。その為に正式登録が15歳以下でも可能となります。ランクアップは迷宮主を討伐する事で可能です。迷宮に入る際にはギルド証が必要で討伐時もギルド証に記載されますので、そちらで判断いたします。はい。フィデリオ君。」
「はい。迷宮主を討伐してもランクアップにはギルドの判断が必要なのは何故ですか?」
「それはですね、ランクが上がれば上がるほど依頼主の客層も上がっていきます。それこそアモンさん方の依頼主のほとんどが大商人や貴族、王族と言った方々になりますので最低限の礼儀やマナー、一般常識が無い人が高ランクにいるとランク付けを行うギルドの信用問題になってしまう為です。その為にギルドでは礼儀やマナーなど以外に様々な講習があるので是非活用してください。説明は以上です。最後に何か質問はありますか?」
(なるほど、確かに社会人において礼儀やマナーは仕事をする上で必要なものだ。時代や世界が違くてもこう言った部分は変わらないらしい。)
「じゃあ、はい、もう1個質問があります。」
俺は納得しながらも再度手を挙げる
「はい。フィデリオ君。」
「はい。最後に質問なんすが、結局のところ俺達にとっての見習い冒険者制度の利点は成人の15歳を迎える前に仮登録として依頼を受けることができるって事だけで良いですか?」
俺は今のところアスランの話を聞く限りではメリットが少なすぎると感じた。
「いいえ、それは違います。本来、Iランク以上の正式登録者が依頼を受けた際に支払われる金額は国家税金10%とギルド手数料10%が引かれた80%が支払われます。しかし、この制度を活用した人は15歳までギルド手数料10%を免除され、国家税金も半分の5%のみになります。つまり95%が支払われます。また、正式冒険者になるとギルドに月に金貨5枚以上を納める必要がありますが、其方も免除されます。更に成人を迎える前にIランク以上の本登録が済んでいる方は成人である15歳まで国家税金10%のみの支払いになります。他に質問はありますか?」
アスランのかなり重要な内容に堪らずラートが手を挙げる。
「はい。ラート君。」
「アスランさん、その情報はオイラでもとても大事だと分かるにゃ。何で、リオが質問するまで話さなかったのにゃ?」
ラートは両腕を組み首を傾げる。
「それはあなた達に、知って欲しかったからです。貴方達は仮登録でありますが、立派な冒険者ギルドの一員です。相手がいう事すべてが事実では無いことも今後あり得るでしょう。また、相手が全てを言わないこともあるでしょう。なので少しでも情報を集める経験を積ませる為にあえて教えないようにしているのです。ご無礼を申し訳ございません。」
アスランさんは笑顔で頭を下げた。
(そう言う事だったのか。経験を積ませてくれてありがとうございました。)
俺は経験が積めた有難いと感謝する。その後俺を除く周りの友達達も最初は非難めいた視線をアスランさんに向けていたが、しっかりとした理由があると分かると視線は無くなった。
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