俺はベルボ修道士に別れの挨拶を行なったあと、少しアクシデントがあったが気にしない方向で考えた。そしてコントみたいな事した自分に複雑な思いを抱いた。
(“事実は小説よりも奇なり”的な事を体験できて感動すれば良いのかベルボ修道士に言われた通り俺のドジっ子属性に嘆けば良いのか…。ハァーッ。男のドジっ子属性とか一体誰得なんだろう?俺、別に男の娘では無いぞ。)
俺は下を向き顔をしかめて小走りしながら自宅では無くギルドに向かった。
(もう、どうせ夕飯に遅れるのが確定しているからなぁ。うん、よし!ギルドに行って依頼達成の報告を行うとしようか!」
「きゃっ!?」
俺はどうやら途中で心の声が漏れていたらしい。そして結果的に叫ぶ形になりすれ違った人が驚いてバランスを崩してしまった。
「ああっ!ご、ごめんなさい。突然大声で叫んで…。大丈夫…ですか?」
俺は突然のアクシデントに慌てて声のする方に体を向けて謝った。
「もう!突然大声出したらビックリするじゃ無い!」
薄紫色のミドルヘアー位の長さでポニーテイルに結んだ女性は酷くカンカンに怒っていた。
「本当にごめんなさい。|お姉さん(・・・・)お怪我はありませんでしたか?」
俺は体格から見て年上だと思い、丁寧な言葉で手を差し伸べた。
「っ!?(ボソッと)ええ、そう、私はお姉さんよ。う”う”ん。貴方、私も怒鳴ってごめんね。私は大丈夫よ。」
女性は怒った表情から何かを呟くと落ち着きを取り戻した。
「そうでしたか。本当にごめんなさい。」
俺は取り敢えず角度45度以上深く頭を下げて平謝りをする。
「良いって言っているでしょ。貴方、名前はなんて言うの?私はクレイトンよ。見ての通り蜘蛛人族よ。」
クレイトンは上半身が人間で下半身は長いスカートの下から見える黒い蜘蛛の脚が見えていた。背丈は見る感じ俺より10cmくらい高身長である。
(俺の身長は90cm位であるから、彼女は1m以上はあるなぁ。)
「僕はフィデリオと言います。クォーターノムルスです。」
「へぇー、フィデリオねぇ。貴方は何歳なの?」
クレイトンは口元をニヤッと笑うと年齢を聞く。
「今年で8歳になりました。あと僕の事はリオで良いですよ。」
「それじゃあ、私はクレイお姉ちゃんで良いわ。今年で11歳になったから、よろしくね、リオ。」
(まさかのお姉ちゃん呼びとはっ!?でも、さっきボソッと呟く前にめっちゃ喜んでいたしなぁ。若しかしたら末っ子なのかもなぁ。恥ずかしいけど、こっちに非があるしお姉ちゃん呼びを頑張ろう。)
「えーっと、クレイお姉ちゃんって呼びにくいから”クレイ姉ちゃん”じゃダメかな?」
俺は顔を赤くして少し照れながら提案する。
「うん、まぁ、良いわよ!これから私の事はクレイ姉ちゃんと呼びなさい。それで、リオはなんで突然叫んだのよ?」
俺は心の声が漏れた事について簡潔に答えた。
「そうなんだぁ。じゃあリオは見習いでも冒険者なんだね。」
「そうだよ。」
「それじゃあ、自分でお金を稼いでいる…よね?」
クレイトンは笑顔で首を傾げる。
「う、うん。今日が初依頼だけど、そ、それが何…?」
俺はまるで蜘蛛の巣に引っかかった獲物の気分を感じ背筋が凍る冷たさで一気に不安になった。
(あれっ!?突然雲行きが怪しくなったぞっ!?お金か!もしかして賠償金的な物を払えって請求されんの!?当たり屋でもやってんの、この娘は…。ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ…。何とかしないと…でも、どうすっかなぁ?)
俺は非常に焦り、学の無い頭を使い何とかして乗り切る様に必死になって考え続けた。
「ちょっちょっと!?何青ざめているのよ!?別に怪我とかしていないし、お金を請求したりしないわよ!」
クレイトンはそんな焦燥しきった俺を見てクレイトンは焦ったように狼狽えた。
「えっ?じゃぁ、何でお金を稼いでいるかとか聞いてきたの?」
俺は如何やら俺達に誤解があるのだと分かり、次第に落ち着きを取り戻した。
「もう!焦ったじゃない。私の実家がね、あそこで食堂をやっているのよ。これでもちょっとは人気があるんだからね!。それでね”値段もお手頃だしサービスするからリオもどう?”って誘おうとしただけよ。」
俺はクレイトンが指差す方向を見ると夕飯の時間に集中しているのか多くの人が食事を楽しんでいた。お手頃な値段と言っていた通りどうやら大衆食堂のようだ。
「そうなの!?僕はてっきり当たり屋的な者だとばかり…。ごめんなさい。初対面に失礼でした。」
俺は驚き、また相手に更に失礼をした事を深くお辞儀をして謝罪した。
「あのね〜リオ…。いや、私もあの話の流れだったらそう考えていたわ。ごめんなさいね。」
クレイトンは苦笑いを浮かべていたが、直ぐに左手を口に当てて少しだけ一考した。
「「………。っぷ!はははは!」」
俺達は互いに謝っている姿に堪えきれず笑いあう。
「なんか、僕達って互いに謝ってばかりですね。」
俺は笑った拍子に出てきた両目の涙を左手で拭った。
「そうね、あははは。おかし〜。」
クレイトンは両手をお腹に当てて笑いが止まらなそうだった。
「それじゃ、明日、クレイ姉ちゃんの店に行っても良い?」
「早速来てくれるの?ありがとうね。オススメはリゴンパイよ。リゴンだからってがっかりしないで食べてみて。お母さんのリゴンパイは本当に美味しいから。」
「リゴンパイ!?絶対に行くよ!」
俺はオススメが自身の好物を使ったパイだった事に驚きと嬉しさで胸が一杯だった。
「リオはリゴンが好きなの?」
「うん!果物の中で一番好き!」
「そうなんだぁ。私も好きよ。明日は待っているわね。店の名前は”タペストリー”って言うわ。分からなくなったら近くの人に聞けば教えてくれるはずよ。」
「うん。また明日ね、クレイ姉ちゃん!」
「また明日、リオ!」
俺たちは互いに右手を上にあげて挨拶をして別れた。
(今更だがもう夕飯の時間は過ぎているから母ちゃんからの説教かなぁ。嫌だなぁ、怒られんの。やっぱり今日はギルドに向かわず家に帰ろう。)
俺はギルドに向かう方向から自宅に帰る方向に進路を変えて向かった。
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