3-3 仲良し5人組

探検の書

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「それじゃあ、みんな〜これからどうする〜?」

俺達の両親が立ち去った後にメルルは、今日の予定はどうするか相談した。

「そうだね……まずは、みんなの今後の目標……と言うか”冒険者としてどう言う活動をしていきたいか”について知りたいかな?」

「うん? リオ君、どう言うことにゃ?」

「う〜ん、俺もあんまし上手く言えないけどさ、ラート君って父ちゃん達の様に強くなる事が目的なんだよね?」

「勿論にゃ! オイラは強くなりたいから冒険者になったんだにゃ! これからは、たくさん迷宮を探索していっぱい強くなるにゃ!」

腰に刺した剣に触れながら元気一杯に話すラートは、遠足を楽しみにしている子供の様に笑う。

「うん、それは凄く良いと思うよ。でね、俺もラート君と同じように強くなりたい気持ちはあるけど……それと同じくらい色々な国や街の景色を見て回る様な旅がしたいんだ」

「えっ!? そうなの!? アタイ、初耳だよー!」

ギョッとした様な驚愕の表情をするシルルは、まるで隠し事をされていたかの様に感じたのか、少しだけ機嫌が悪かった。

「まあ、今まで両親にしか言ったことが無いから、そりゃ……ね。それで、色々な人や食べ物に出会ったり、色んな景色を見てみたいから、このままラート君と活動していたら何処かで、考えがぶつかると思うんだよね。ラート君はさ、そんな時に強くなる事を二の次に考える俺を許せる?」

「ゔ……そ,それはにゃ……」

俺の意地悪な質問に顔をしかめるラートは、焦りながら必死に答えを出そうと悩んでいた。

「あはは! ラート君ってやっぱり分かりやすいね! でも、多分、俺もその時になったら……どうだろ……ラート君と大喧嘩する気がする。俺もみんなと喧嘩して絶交とか嫌だからさ……最初のこの時にみんなの考えを聞いておきたいんだ。そうすれば、Iランク迷宮を踏破した後もきっと仲良く出来ると思うんだ。どう、かな?」

例え5年以上一緒に遊び・切磋琢磨してきた幼馴染とは言え、ずっと一緒と言うわけにはいかない。それぞれが、自分の人生を歩む為に別れる事もある。

しかし、その別れ方が喧嘩して絶交した別れ方なのか、お互いの道を祝福して尊重し合う仲の良い別れ方なのかで、今後の人生に大きく影響するだろうと思った俺は、胸が締め付けられるのを感じながらも全員の顔を見渡して聞いた。

「うん、それなら僕はリオの意見に賛成にゃ。僕も、ちょっと考えていたにゃ。多分、気軽に声をかけて他の人達と一緒に一団を作れるのってIランクやHランクの時だけだと思うにゃ。だから、そう言う経験を捨てるのってかなり勿体無い気がするにゃ。まあ、僕はシルルが良いって言うんなら、ずっと一緒に居たいにゃ」

「ーー!? あはは! もう、ナートは可愛いな! アタイもナートと一緒に居たいぜ!」

「ーーうん! シルル、これからもよろしくにゃ!」

恥ずかしそうにそっぽを向いて照れるナートを見たシルルは、顔を赤らめながらもナートを抱き寄せる。そして、2人は顔を合わせて笑い合った。

「はいはい、惚気はそこまでね〜」

「はぁ〜なんか、悩んだオイラがバカだったにゃ。でもそう言う事ならオイラもリオ君の考えに賛成にゃ! オイラもこれからもずっと、みんなと仲良くしたいにゃ!」

「アタイも〜シルル姉みたいに恋人を作りたいから賛成〜」

ため息混じりに脱力したラートは頭を抱えたが、直ぐに気を取り直して、俺の意見に賛同する。

メルルもナートとシルルの仲睦まじい関係に羨望の眼差しを向けつつ、目は少しギラギラしていた。

「えー? メルルちゃんは、俺とラートのどちらかを好きにならないの?」

「リオもラートも子供っぽいから好みじゃ無いよ〜もっと大人の余裕を持って出直してね〜」

「酷いにゃ! 告白する前に振られたにゃ! どうしてくれるんだにゃ! リオ君!」

「あはは! ごめん、ごめん! 今度ご飯奢るから許してよ!」

「うんにゃ! それで許すにゃ!」

俺とラートとメルルによるいつものノリにその場にいる俺達は笑い合った。

「そんじゃ、次はどうするー? 試しに一団でも結成するー?」

「うん、それが良いと思う。父ちゃん達の試練に『俺達で』って言ってたし一団を結成した方が、団体行動の予行練習になると思うんだ」

「それじゃ〜団体の代表は誰にする〜?」

「取り敢えず、仮だし、俺はこの中の年長のラート君かナートのどっちかが良いと思うんだ。みんなは?」

「アタイはーナートかな? 恋人云々を抜きにしてもラートよりもしっかりしているから安心かな?」

「アタイもシルル姉と同じ〜」

「にゃはは……悔しいけどオイラもにゃ。ナートの方がオイラよりもしっかりしているから、ナートが良いと思うにゃ」

「と言う事だけど、ナート君はそれで良い?」

ナート以外の全員がナートを団の代表に推しているが本人の意思も大事な為に俺は、ナートの意見を聞いた。

「う〜ん、みんながそう言ってくれるのはとても嬉しいにゃ。でも、僕はラートにやって欲しいにゃ」

「それはなんで?」

恥ずかしくも嬉しそうな表情のナートだったが、ナート自身は兄であるラートを推薦した。その事に少し意外だと思った俺は、ナートの真意について質問した。

「もしも、今後、僕とラートがバラバラに一団を結成した後もこの調子だと、とても心配にゃ。だから、これを機会にラートにもっと落ち着いて欲しいにゃ」

「って言われているけど、ラート君はどうする? 俺は元々2人のどっちかが良いって意見だから、ラート君でも良いよ」

「う〜ん……そうにゃ……それなら折角だしオイラはやってみたいにゃ。シルルちゃんもメルルちゃんもオイラがやっても良いかにゃ?」

双子の弟に心配されているラートは、少し自信なさげに、申し訳なさそうに代表を務めたいと申し出た。

「そう言う事なら、アタイも文句ないよー」

「アタイも〜シルル姉と同じで賛成〜」

「それじゃ、みんなよろしくにゃ! それで、早速だけど、一団の名前はどうするかにゃ?」

「リオがさっき言っていたし〜どうせ仮だから”仲良し5人組”とかで良いと思う〜」

「俺もどうせならカッコ良い名前とかにしたいけど……それは、自分たちで新たに一団を結成した時に考えれば良いから、メルルちゃんに賛成」

ラートに団の代表が決定した為に団名をどうするかと言う時にメルルが言った俺の”仮だから”発言に俺は若干後悔した。

どうせなら、父達の様なカッコ良い団名にしたかったが、よく考えれば、直ぐに解散する団にそこまで時間をかけるのが勿体ないと思い、気持ちを切り替えた。

「ナートとシルルちゃんはどうかにゃ?」

「僕もなんでも良いにゃ」

「アタイもー」

「それじゃあ、そのように申請するからみんな、ギルド証を貸して欲しいにゃ」

ショルダーバックからギルド証を取り出した俺を含めた全員は、ラートにギルド証を渡すとラートはそのままエリー受付嬢の元に行き手続きを行った。

「申請して受理されたにゃ。ギルド証をみんなに返すにゃ」

「(ギルドカード表示)」

[名前]フィデリオ
[年齢]10歳
[種族]妖精種 クォーターノムルス
[強度]9/100(70/90)
[職業](一覧)
[技能](一覧)
[番号]
(9508625714062305-1)
(9508625714062305-4)
[団名]仲良し5人組

[番号]が2つになっているのは、冒険者ギルドと獣魔ギルドの2つに所属しているためだ。そして今回、新たな項目[団名]が追加されており、仮パーティー名の仲良し5人組が登録された。

「それじゃあ、最後にリオのお祖母さんの薬屋に行ってポーション数本を買って、早速迷宮に行こうぜ!」

「今日は様子見で、本格的な探索は明日以降にするにゃ。それじゃあ、出発にゃ!」

「「「「お〜!」」」」

冒険者ギルドの出口から左の方に進み、神殿通りを歩いた俺達は、アリア祖母が営む薬屋ヒイラギに到着した。

「あら? まあまあ! 貴方達、こんなにたくさん来て今日はどうしたのかしら?」

「アリアお祖母様、本日、僕達は冒険者になったので、ポーションとマジックポーションを購入しに参りました。購入してもよろしいでしょうか?」

敬語では無いが、祖母が許してくれる範囲で礼儀正しい対応をした俺は、少し緊張していた。

「まあまあ! そうだったの? うふふ、貴方達、冒険者になれておめでとう! これは、そのお祝いよ。受け取って頂戴」

アリア祖母は、俺達に祝福の言葉を述べると木の箱に入ったポーション10本とマジックポーション10本の合計20本を無料でプレゼントした。

ポーションは粗悪品でも金貨3枚、普通なら金貨5枚、アリア祖母の様な高級品であれば7〜10枚はくだらないほど値が張る。

今日の俺達は、”ちょっと高いけどある意味お守り代わりに購入しておこう”程度の感覚で各自1本ずつ購入予定だった。

「こ、こんなに貰ってもよろしいのですか!? 僕達も冒険者ですので、お金はしっかりと払いますよ?」

最低金貨140枚、日本円で140万円相当の品々に手や声が震えながら、興奮した俺はアリア祖母に対して暗にお小遣いの額が常識を超えている事を伝えた。

「今回は、貴方達へのお祝いよ。次回からはしっかりとお金を貰うから受け取って頂戴」

「あ、ありがとうございます! みんな! 今日は婆ちゃんの奢りだ! 早く詰め込もうぜ!」

祖母の優しさに触れた俺は感謝しつつも目の前の光景に興奮しすぎて気が緩みつい、いつもの口調で話してしまった。

「リオ君、”アリアお祖母様”でしょ?」

「あ、はい。みんな! 少し訂正するよ! アリアお祖母様からの贈り物だ!」

「「「「リオ君のお祖母様! ありがとうございました(にゃ)」」」」

「うふふ、気をつけていってらっしゃい」

各自ポーション2本、マジックポーション2本ずつをバックに入れると、その場で挨拶を行い、店を出た。

「ふぅ〜俺、アリア婆ちゃんは、好きだけど苦手なんだよね〜。でも、ポーション類たくさん貰えたから良かったね!」

「そうそう! お陰で無駄な出費も減ったしこれで、アタイらもIランク迷宮を探索できる」

「それじゃあ、早速行くにゃ! みんな! オイラに続けー」

「「「「お〜」」」」

迷宮通りを町外れの方角に真っ直ぐ進むとそこには、黒い金属で出来た箱型の建物があり、その周囲を覆う様に網目状のフェンスで囲まれている。迷宮の入り口である門は、基本的に野ざらしでは無く、金属で出来た箱型の建物の中にある。

その建物の入り口には、大きな看板が建てられており”ここは、「Iランク迷宮:試練の門」無断で立ち入れば厳罰、最悪命の保障はなく騎士団も責任を負わないものとする”と流石に漢字やローマ字などは使われていないが平仮名と片仮名でこの様に注意書きをしている。

更に、万が一不注意で一般人が入らない様に常時2名の騎士達が門番しており、定期巡回のコースにもなっているのでよほどな事がない限り、一般人が入ってくる事は少ない。

しかし、それでも、未成年で冒険者ギルドに所属せず勝手に行く者や酔っ払って間違えて入る者も後を立たず毎年数名は、犠牲者が出ていると知り合いの騎士ジェードリヒは嘆いていた。

「ここは、Iランク迷宮:試練の門だよ。子供の君達が来るべきところでは無い危険な場所だから、早く立ち去るんだよ」

ベテランそうな中年の男性騎士と若い男性騎士が試練の門の門番を務めていた。中年騎士は、寡黙でありながら、若い騎士をじっと見守りまるで職業訓練をしている先輩社員の様に待機していた。

「お仕事、お疲れ様です。でも、騎士さん、僕達は大丈夫です。僕達はIランク冒険者なので入っても良いですよね?」

俺がそう言うとそれぞれが門番をしている騎士達にギルドカードを提出して、入室許可の確認をしてもらった。

「ええっ!? か、確認するね……本当だ、Iランク冒険者だ……失礼しました! 入室してください」

若い騎士は、優しく諭す様な表情から目を見開き驚愕していたが、中年騎士の眼圧にハッとすると直ぐに職務を思い出し確認を行った。

「ありがとうにゃ。お仕事頑張ってにゃ」

「それにしても、あれが数年に1度くらいに見かけると言われている”子供冒険者”か……初めて見たなぁ。あ! 次の方、ギルド証の確認を致しますのでご提示してください!」

俺達が建物の中に入ろうとする時に、ふと若い騎士が俺たちの事を”子供冒険者”と称した為に、騎士の中では見習い冒険者上がりをそう呼ぶと言う事が分かり、関心しながら門の方まで歩いて行った。

 

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