アルバイトを終えた俺は、父と母に迎えに来て貰い夕食を食べてた。その後に俺は、アラン祖父からの提案について許可をもらうために相談してみた。
「父ちゃん、母ちゃん。今日ね、婆ちゃんの店の手伝いの時にアラン爺ちゃんが帰ってきたんだ」
俺はまるであの時の興奮を思い出すかの様に話す。
「へぇー、父ちゃん帰ってきたんだぁ。明日、リオを預ける時に挨拶をしなくちゃなぁ。なぁ? 母ちゃん」
「そうね、お義父さんに挨拶しようね。教えてくれて、ありがとね、リオ」
両親はお互いに顔を合わせながら明日の打ち合わせを行う。
「うん。それでね、爺ちゃんが冒険者を目指すなら鍛えてやるって言ってくれたんだ。父ちゃん、母ちゃん俺さ冒険者に成りたいんだ」
俺は少し恥ずかしそうに両親に伝える。
「そうかぁ。まぁ、そうだよなぁ」
「ええ、そうね」
父は頭に母は顔に手を当てながら納得したご様子で互いを見て頷いた。
「リオ、俺たちがお前に冒険者を目指す事を反対はしない。現に俺たちもその夢を追いかけているから、むしろ、言える立場では無いからな」
父は少しだけ申し訳なさそうに言う。
「でもね、リオ。これだけは、理解して頂戴。冒険者を目指すって事はとても辛い事よ。私達は、常に死ぬ事と生き抜く覚悟を持って冒険しているわ」
母も父と似た表情だけど、とても辛そうな表情を浮かべている。
「確かに冒険者は、俺の父ちゃんの様な物語の英雄譚にありそうな出来事はある。でもなぁ、俺たちが魔物を殺す以上に魔物も俺たちを殺そうと躍起になるんだ。リオにはその覚悟が持てるか?」
父ちゃんと母ちゃんはいつも以上に真剣な表情でより冒険者の辛さと覚悟を問いてきた。
「正直、分かんない。多分、本当にその時になって見ないと覚悟があるとか持てるとか分かんない。けどさ、俺は父ちゃんや母ちゃん、爺ちゃんに憧れちまったんだよ。”俺もこんな冒険がしてみたい!”ってね。確かに傷つくのも……傷付けるのも……死ぬのも……それ以上に怖いよ。だからさ、正式に冒険者になる時までに爺ちゃんに鍛えて貰いながら覚悟を身につけるよ。それじゃ……ダメ……かな?」
俺は今覚悟しているって言っても口だけになりそうで、2人の先輩冒険者に不誠実と思い、正直に今思う事を答えた。
「いいや、リオ、そんな事はないぜ。むしろ、”覚悟している”って即答された方が心配だったさ。なぁ? 母ちゃん」
父は不安そうな表情の俺の頭を撫でると笑い掛け、母の方に顔を向ける。
「そうね。でも私達の話をちゃんと受け止めてくれるなら大丈夫じゃないかしら? アンタ、私はリオが冒険者を目指す事、お義父さんに鍛えてもらう事に賛成するわ」
母も父と目を合わせ頷き、修業の許可を出す。
「俺も賛成だ。今の内から父ちゃんに鍛えて貰えるなら俺たちも安心して迷宮に行けるってもんさ。お互い頑張って行こうな、リオ」
父と母は俺が祖父に鍛えられる事と冒険者を目指す事に賛成してくれた。
「ありがとう、父ちゃん、母ちゃん。俺、頑張ってみるよ。」
俺は安堵した表情から笑顔になり両親に感謝した。
「そう言えば、父ちゃんと母ちゃんってEランクで凄いんだね」
「おう」
「ありがとね、リオ」
両親は少し照れていた表情で返事を返す。
「爺ちゃんはE〜Sランクの冒険者が1割しか居ないって言っていたけど……実際Eランク冒険者ってどのくらいいるの?」
「ん? 1割? あー父ちゃん、間違いじゃないけど説明不足だなぁ」
父は首を傾げると右手で自身の後頭部を掻いた。
「えっ? 違うの?」
「違くは無いわ。ただね、1割と言うか数字は過去の冒険者の数を含めた数字なのよ」
母は左人差し指を立て、俺と目を合わせながら不足分を付け足し説明する。
「つまり寿命なり戦死なりして死んだ冒険者も含まれるって事さ。今生きている冒険者でEランク以上はそれよりももっと少ない人しか居ないさ」
「………えっ? 本当に?」
どうやら俺の憧れの人達は、俺が考えていた遥か先にいる事に言葉を失う。俺が目指すべき場所について考えていると母は説明を続けた。
「リオ、前にパーソナルボックスの話をしたのだけど覚えてるかしら?」
「うん。覚えているよ」
「それなら簡潔に言うわ。パーソナルボックスの情報ってギルド創設時から載っているのよ。ギルドに行けば死亡して50年以上経過した情報は自由に閲覧出来るのよ。ギルドは創設されてから組織形態が変化しながらだけどその歴史は1200年は経過しているわ」
「………」
俺はギルドの圧倒的なまで歴史に慄く。
「勿論、リオが冒険者になっても直ぐにはこの情報は閲覧は出来ないさ。何故なら冒険者に成ったばかりではランクが足りないからだ。この閲覧機能はEランク以上の特権なんだ」
「えっ? そうなの? 王様とか貴族とかでも見れないの?」
「おう! 例え王族でも大金持ちでもランクが足りなきゃ見れねぇから、覚えておくと良いぜ、リオ。それにな、そもそもFランク以下はこの権限自体を知らないし、ギルドも積極的に教えようとしていないからな」
父は少しだけニヤッと笑いながら説明する。
「はぁ〜凄いんだねー。でも、なんでパーソナルボックスの情報閲覧がEランク以上の特権なの? 死んだ人のを見たって仕方がなくない?」
俺は身分証明書としてしか利用できない物を見てどうするのかと眉を潜めながら疑問を呈した。
「そうでもないぞ。例えば特殊職業の取得条件やその職業技能の効果、耐性系技能の上昇率や発現から見える考察など多くの情報を得ることが出来るんだ。」
俺の質問に父は首を横に振り説明する。
「情報?」
俺は首を傾げる。
「そうよ。普通は、自分たちの冒険の知識や経験などの情報は秘密にされるものなのよ。それこそ、師弟関係や親子関係など親しい間で共有されても赤の他人には公開しないわ」
「そうだ、リオ。例えば俺の父ちゃんが冒険している熔海の門を例にするぞ。あそこに行っていた先人達は皆揃って火耐性や熱耐性などが他の耐性に比べて突出して上昇しているんだ。もし、何も情報がない状態で行って行ったら、耐性の足りなさやその環境に戦闘に支障が出て、それが原因で死ぬかもしれない」
「確かに、そうだ」
「それが、何らかの対策を用意していたら生存率はグッと上がるのであれば、とても便利だと思わないか?」
両親は何度も頷き答える。
「分かったよ。ありがとね。父ちゃん、母ちゃん」
「いいって事よ。リオ、良い冒険者になれよ」
「私達も先輩としてあなたの行く先で待っているわ」
俺は再度両親に感謝を捧げ自分の夢へと歩き出そうとした。取り敢えず今日の日課を済ませて、明日から頑張ろうと思った。
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