「リオ〜! そろそろ出発するわ。準備は出来良い?」
俺が思考に耽っていると後ろから両親にそろそろ出発する旨を言われる。
「えっ? あっ! ごめん、母ちゃん! 今、行く!」
「うふふ、父ちゃんが荷物を持って外で待っているからだ早くおいで」
母は俺に手を出し声掛けを行い、一緒に手を繋ぎながら玄関を出た。
「ごめん! 父ちゃん、母ちゃん、お待たせ!」
俺は待っていた父に謝ると父は気にしていないと言い、家の戸締りを行なった後に空いている手で俺のもう一つの手を繋いだ。
「気にすんな、リオ。そんなに待ってねぇし、日課と違ったお出かけだからな、何かと考えちまうのは無理ねぇよ。よし……戸締りをしたからそろそろ行こうぜ。婆ちゃん家は店裏手にあるから人混みが多く迷子になるかも知れねぇから、最初は俺たちと手を繋いで行こうぜ。な?」
「それじゃぁ、リオ、アンタ、行きましょう」
「おう! 行こうぜ」
「うん! 行こう、行こう」
俺たちは、祖父母宅歩き出した。俺は祖父母宅に向かう最中、周りをキョロキョロしながら初めて見る街の景色、人、店などにとても興奮していた。
「(うぉ〜! スゲー、スゲー。人、多い…っ!?)」
興奮しきっている俺を横目にみて両親は微笑えんでいる事に俺はびっくりした。
「(うぉぉ……俺は、まるで子供かよ……。あ、いや、まぁ、子供か、俺は。なら、若干恥ずかしいけど楽しむしか無いか)」
あまりの恥ずかしさで俺は下を向き、子供である事を再度認識した俺は子供の様にはしゃぐ事を心に決めた。俺は祖父母宅に着くまでの間、両親にアローゼンやイシュテリアの事、冒険者ギルドの事について色々話を聞いてみた。
「父ちゃん、母ちゃん! そう言えばさぁ、アローゼンやイシュテリア、冒険者についてもっと教えてよ!」
「うん? そ〜だなぁ。まぁ、リオなら賢いし多分理解出来んだろ。よし、まずはアローゼンについてだ! アローゼンは迷宮王国って言ってな。その名の通り他国よりも迷宮の保持数がとても多いんだ!」
「おおっ! すごく……多い?」
「おう! 合っているぞ! 他国では大体3〜5箇所くらい迷宮を保持しているが、アローゼンは確認できている限りで18箇所の迷宮を保持しているんだ」
「えっ! そんなに違うの!? ん? 確認している限りではってどう言う事?」
俺は意外とって話ではなく迷宮が多過ぎる事に驚愕し、父の言葉に引っ掛かりを覚える。
「良いところに気が付くな〜リオ! 実はな、アローゼンの迷宮ってまだ全部かどうか分からないんだよ。
「えっ? 分かっていないの?」
「おう! 元々はアローゼンも保持数が8箇所で他国よりも多いが、”まぁ迷宮王国だし?”って事で納得されていたんだ。」
「うん、うん」
「でも、100年くらい前から新たな迷宮が4箇所出現したり元々保持していた迷宮の内6箇所に隠し迷宮が発見されたりしてなぁ。後の2箇所にも隠し迷宮があるんじゃないかって言われているんだよ」
父はオレの頭を撫でながら説明の続きを言う。途中迷宮が多過ぎる理由を説明するときは肩をすくめて言った。
「へぇーそんなんだ〜。じゃあ、王都イシュテリアには何箇所くらい迷宮があるの?」
「元々保持していた4箇所と新たに発見された隠し迷宮3箇所の7箇所だよ。その為に多くの人がイシュテリアで店を構えるから此処は常に活気があるんだ」
父は自慢げな表情で説明する。
「ふ〜ん……分かった。それじゃあ、次は冒険者について教えて!」
「任せてちょうだい! 冒険者は、まず冒険者ギルドに所属する必要があるの。そこでギルドカードを作成し初めて冒険者の仕事が出来るわ」
「おおっ! 冒険者ギルド! ギルドカード!」
「うふふ、ええ、ギルドでは依頼された内容に応じた依頼金から税金やギルド運営費が引かれた額が手持ちに入るのよ。依頼は様々で探し物から庭の手入れ、護衛、迷宮魔物の素材や魔石の納品などがあるわ」
今度は胸を張った母が俺に冒険者について教えてくれた。
「へぇー色々あるんだねー。依頼金は全額貰えないの?」
「ええ、そうよ。アタシたち冒険者はギルドに所属すると流民扱いになるから極論を言えば国に税金を払わなくても良いし、戦争の時には兵士になる事は無いわ」
「そうなんだ……でも、話の流れからするとそれだとダメなんだよね?」
「その通りよ。それで、税金を納めないと国の保証が受けられなくなっちゃうのよ。そうなると国が所有している迷宮も使用禁止になっちゃうわ」
「税金ってとても大切なんだね」
「そうよ。それで、アタシらって急に依頼で他国に長期間住む事や用事で引っ越しする事が割と良くあるわ。リオも分かるでしょ?」
「うん、俺達の引っ越しのことでしょ?」
「そうよ。それで、冒険者自身が国に納税すると各国で納税義務が発生する事もあって最悪、脱税扱いになり犯罪者になった時代もあったそうよ」
「うへ〜めんどくせー」
俺は納税の面倒さに顔を顰めた。
「そうなのよ。そうなると国もギルドもアタシら冒険者もお互いに良く無いから依頼金を渡す前に税金とアタシらの納税を管理する為のギルド運営費が差し引かれるのよ」
母も同意する様に頷き説明を続ける。
「でも、冒険者一人一人の情報を管理して各ギルドに共有するのって普通に無理だ思うだけど、その辺りはどうなってんの?」
「アタシも詳しくは分からないわ。でも、ギルドカードに今までの依頼内容をリレキ?情報として読み込ませて各ギルドに共有する魔道具があるわ」
俺は母の言葉にある確信を得て内心呟いた。
「(履歴情報って……それ作った人、絶対転生者か転移者の類だよ。便利でありがたい事だけどさ……時代と言うか世界観に合っていない性能だよ、それ)」
そんな俺を他所に母は思い出しながら話を続けた。
「名前は”パーソナルボックス”って言ってね。ギルドカードと連動して使える不滅神の魔道具なのよ。ギルドカードも”不滅と炉心の神ヘスティルト様”が製造方法や術式を残したそうよ。」
「えっ? 神様が作ったの?」
「そうよ。でも、多くの魔工技師達がそれを元に技術発展をしようとしたけど内容が一つも理解出来ず、実験を行うがその全てが動作せずに終わったらしいわ」
「お、おう……ありがとう……母ちゃん。よく分かったよ」
俺は確信を得たとか言った割に普通に間違えた事でとても恥ずかしくなり顔を”カァッ”っと赤くし俯いきながら、説明してくれた両親に感謝を述べた。
「それなら良かった! だが、元気が無くてどうした? 疲れたか? もうすぐ着くから頑張ろうな」
「大丈夫だよ。父ちゃん、母ちゃん。なんかさ、そのパーソナルボックスを作った人凄いなーって事を考えていたら神様だったから、なんか……こう……間違えて恥ずかしく思っただけだよ」
俺は心配してくれた両親の顔を見て嘘はつかないと思い照れながら心情を述べだ。
「うふふ! そう言う日もあるわよ。あっ! リオ見えてきたわ! あそこよ!」
母は口元に手を当て笑いながら俺を励ますと、ふと顔上げて祖母の店を指差した。店は売り場と生産場所ががある立派な建物だった。
現在、俺は家から徒歩で20分くらいの距離を歩いて祖母の店に到着した。その店の裏に行くと一軒家があった。そこが祖父母の自宅である。俺は話に聞いた祖父母に会える事を楽しみに思い自然と口元が笑った。
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