次の日の朝、起きてみると体から放出している”何か”を感じ取った。
「(この放出してんのって……もしかしなくても……魔力じゃね?)」
俺は若干寝ぼけながらステータスを確認してみる。
(ステータス)
[名前]フィデリオ
[年齢]5歳
[種族]妖精種 クォーターノムルス
[強度]3/100
[力量]生力33魔力23筋力13速力20知力10器力10
[職業]「・魔法士 1/20(1/20)」
(一覧)
[技能]
・土魔法0/0(0/0)・水魔法0/0(0/0)
・筋力向上Ⅰ 2/10(0/30)・魅了耐性Ⅰ 1/10(0/10)
・暗算1/10(0/5)・魔力感知Ⅰ 1/10(0/10)
[称号]イシュリナの祝福を受けし者、誘惑に打ち勝つ者
新たな技能に”暗算”と”魔力感知Ⅰ”が追加された。更に、筋力向上Ⅰも技能レベルが1上昇している事が分かった。
暗算1/10(0/5):暗算する時に微弱補正。強度上昇時に知力を1つ上昇。最大で5つ上昇させる。
魔力感知Ⅰ 1/10(0/10):魔力を感知出来る。強度上昇時に知力を1つ上昇。最大で5つ上昇させる。
習得した技能はとても良い物だったので俺は寝ぼけた状態の頭から一気に覚醒した。
「(これって……何も知らずに熟練度上げしていたら大変なことになったんじゃね? ゲームじゃ無いけどさ……ゲームだったら最悪キャラメイクから作り直さないとヤバイやつだろこれ。あっぶね〜! 現実世界でやられるとは思いやしねぇよ……異世界の転生者って称号破棄しておいて良かったわ。絶対あの称号って呪いだろ)」
俺は若干暑い気温の中顔をしかめた。そして、最初の強度上昇で上がらなかった知力が魔力感知を習得した事で器力もまた技能習得で上昇する可能性に気がつきより表情を暗くした。それから日課のランニングを終えて朝食を食べた後に母の家事の手伝いを行い、魔力感知Ⅰが発現したこと報告する。
「母ちゃん! 今日ステータス確認したら魔力感知Ⅰが発現していたから、魔法の修行をして欲しい!」
「あら、少し遅かったね〜。私の時は1日で取得出来たけど、これはハーフとクォーターの違いならかしら? まあ、良いわ。後で行くからちょっと待ってなさいね」
母は俺が予想より遅く発現した事に驚いていたが、昼食の下ごしらえを行い修行に付き合ってくれた。
「リオ。魔力感知が出来ればお腹から放たれる魔力をある程度操作出来る様になるわ。さぁ! やってみて」
俺は母が言ったように行うが上手くいかず操作出来なかった事を母に伝える。
「ふっ……ぐぅっ……はぁぁぁっ……いや、出来ねぇよっ! 母ちゃん、なんかコツはないの?」
「コツね〜。う〜ん。あたしが師匠から教えてもらった時は魔力を血液の様に循環させて、魔力に方向性を与える様に想像しながら行うって習ったわ。あっ! ちなみに血は身体を血管って管を通って身体の中をグルグル回っているのよ」
母は懐かしそうに思い出しながら俺に助言をくれた。しかし、俺はそれ以上に師匠が誰か気になり質問した。
「へぇーそうなんだ〜。ん? えっと……ちょっと待って。母ちゃんの師匠ってどんな人なの?」
「あぁ、師匠はあたしの父親でリオの祖父だよ。父さんはあたしに魔法を教える時に条件として師匠呼びが条件だったから、今でも癖で言っちゃうんだよね」
(師匠とはキース爺ちゃんの事だったらしい。そう言えばキース爺ちゃんは水魔法の天才だっけか?)
俺の納得した表情を見て母は説明を続けた。
「先ずは、お腹から放たれる魔力を胸や頭に向かわせて右肩から右腕や右足を通り左足、左肩、頭、胸、お腹に戻して循環させる。慣れてきたらお腹に戻さず頭、胸、右側、左側、胸、頭と少しずつ意識を少なくするのよ。そうすれば、自然な魔力操作が出来るやうになるわ」
母のまるで血液の様な説明はとても想像がしやすかった。その為に俺は早速両目を瞑り魔力感知に集中して言われた通りに行う。母は更に続けて説明を行う。
「魔力操作がある程度出来ればリオなら魔語を覚えて直ぐに魔法を使えるわよ。本当は魔力操作の後に魔力変質を行う必要があるけど、魔法適正がある人はその属性の変質はやらなくて良くなるからね」
母が説明を終わると俺は一度中断してふと疑問に思った事を問いかけてみた。
「それじゃ、魔力変質ってなんで必要なの? 魔法士って魔法適正があるひとが発現出来る職業でしょ? 無駄じゃない?」
「それはね、魔法士が適正以外の魔法を使う時に必要な技能なのよ。例えばリオが火属性の魔法を使うためには魔力から適正属性の魔力を分離させて純粋な魔力の”無属性魔力”を抽出させる事が必要なのよ。それを変質させて火属性魔法を使うには魔力変質と魔力分離という技能が最低でも必要なのよ。また、無属性魔力はそのまま、無属性魔法として使えるのよ」
俺の質問に母はマシンガントークをする。
「無属性魔法ってどんなのがあるの?」
「無属性魔法は契約魔法や魔力防御などがあるわ。特に魔力防御は適正以外の魔法を受け続ける事で体に耐性という形で適正を生み出すからかなり重要な魔法になるわ」
母は右人差し指を立てて丁寧に説明する。
「でも、魔法って火水風土の基本属性魔法と光闇の上位魔法の合計6つだよね。無属性魔法を入れたら7つじゃないの?」
「勿論だけど一般的にはそう言われているわ。でもねそもそも魔法習得が難しすぎて、一般の人はその属性自体がある事すら知らないのがあるわ。アタシは師匠が使えたから努力して覚えたけど……あっ! もし使えるとしたら獣人種かな?」
母は少し首を傾げ頭を悩ませる仕草を行うと、思い出したかの様に声を上げた。
獣人種とは人間を元に獣の特徴を持つ種族のことである。主に犬人・猫人・鳥人・馬人・熊人・兎人・蛇人・豚人・蜘蛛人等の総称で有る。
比率は最大でも人:獣=50%:50%で例えば猫人なら耳が猫耳で腕や足の毛が毛深く、尻尾が有るのが特徴で有る。馬人なら下半身が馬で上半身が人の特徴がある。
「獣人種って無属性魔法が得意なの?」
「そうじゃないわ。獣人種は他の種族に比べても五感が敏感な種族なのよ。その為にナド操作に関して言えばあたしたち妖精種と比べても劣らないどころかむしろ優秀な種族なのよ」
魔法を変質する時は才能が有ろうが無かろうが僅かな不快感を与える。
「ヘェ〜そんなに優秀なの」
「うん、そうよ。でもね、その分属性に変質させた魔力の僅かな不快感さえも敏感に感じ取ってしまう種族でなのよ。普通なら魔力の融和性によって無意識に感じないようになるけど、獣人種は長い年月を経てゴド操作が衰退しその機能が失われた結果そうなってしまったのよ」
しかし、獣人種は五感が鋭すぎるが故に本来、無意識的に感じ取れない筈の不快感を感じてしまうそうだ。
「(変質時の不快感とは恐らく魔法使用時に多分あるんだろうなぁ)」
「す〜っふぅ。す〜っふぅ。す〜っふぅ」
俺はそう納得してより断続的で長い深呼吸を行い集中力を高め魔力操作の修練を再開した。
「(よし……まずは、お腹から胸に魔力の流れを変えてみよう。ゆっくり……やろう。どうせこの後はやる事があっても出来ることは無いし)」
「あっ! 忘れていた……リオ、明日から何だけどね、あたしと父ちゃんは冒険者稼業を本格的に再開するからお義母さんの家に行くからそのつもりで。ね?」
修練を再開した俺を見て母は何かを思い出したかの様に追加で話した。
「お母さん? ってどっちの婆ちゃんなの?」
俺は再度修練を辞めて母にどっちの祖母かを聞き直した。
「父ちゃんの方だよ。アタシは自分の両親を父さんや母さんって呼んで、父ちゃんの両親をお義父さんやお義母さんって呼んでいるわ」
「うん。分かった。母ちゃんも冒険に気をつけてね」
「うふふっ心配してくれたのね。とても嬉しいわ! ありがとうね。まぁ、最初の内は冒険者としての勘を取り戻す為に時間を費やすからそこまで無理はしないけどね。父ちゃんは、ちょくちょく冒険に行っていたし、他の団員も直ぐこっちに拠点を移すって連絡が来たからね」
そう言うと母は俺の頭を撫でながら優しい顔でそう呟いた。俺はこそばゆかったが、邪険にせず大人しく頭を撫でられた。その後母は家事を再開し俺も修練を再開しその日が終わった。
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