俺は朝日が昇る前の早朝に起きた。
「(最近、気がついた事ではあるが今世は、割と早寝早起きが出来ている気がする。前世でも若い頃は割りかし出勤時間が早かったから慣れていたけど……無茶苦茶辛かったからなぁ……今の所苦じゃないから凄く良い気分だ。やっぱりスマホ無いからやれる事が必然的に無くなった事が要因か?)」
それにしても早すぎるのは前世と比べてやれる事が無いからだと分析し日課の祈祷を行う。何時もなら父とランニングを行なっていたのだが、流石に疲れているだろう父と母をこんな時間に起こすのは気がひけるからだ。
「(女神イシュリナ様……今日も両親や婆ちゃん達と無事に1日を過ごせますように)」
俺は祈り方が正式な分からない為に取り敢えず膝立ちを行い顔の前で両手を合わせて祈った。
「(時間があった時に神殿に行って正しい祈り方を学ぼう行くか……間違っていたら失礼だし。マジで天罰とか怒ったら、それこそ怖えし)」
俺は雑念があったものの祈りが終わらせた。その後二度寝するのは勿体から魔力操作を行うと体感で1〜2時間行なっていると両親が起き出した。
「おはよう、リオ。今日も早いな〜あぁ〜っ!はぁ〜。んじゃ、走りに行くか。母ちゃん、リオと走ってくるわ」
父は背伸びをして意識を覚醒しランニングの準備をする。
「おはよ〜う。うわぁ〜ぁ。久しぶりだね〜この疲労感は。リオもアンタもいってらっしゃい。気をつけてね〜」
母も欠伸をして少し寝ぼけていて、珍しく口調も伸びていた。
「父ちゃん! 今日から走るところを婆ちゃん家までの道にしたいんだ!」
「それは別に良いが、急にどうしたんだ?」
俺の提案に父は不思議そうに振り向く。
「俺が婆ちゃん家まで一人で行けたら何かと便利だし、俺も早く道を覚えたいんだ」
王都イシュテリアは治安が良い方らしいが、それでもスリは兎も角として人攫いは稀に噂を聞く。俺は両親に心配をかけたく無い反面何かあった時の避難地が欲しいと言う恐怖心の両方があった。
「そうか〜。毎度の事、気ぃ遣わせて悪いな〜。良し! んじゃ行くか〜」
父は俺の気持ちを察したのか謝ると俺たちは婆ちゃん家まで走る。結局、家から婆ちゃん家まで一人で往復は出来なかったが、片道までなら走れた。その為に帰り道は無理せず家に歩いて帰った。
「母ちゃん、ただいま!」
「お帰り、朝ごはんもうちょっとで出来るからちょっと待っていてちょうだい」
「おう。母ちゃん、ただいま〜。んじゃ、俺は今日の準備でもしてるわ」
父はそう言うと冒険者の準備をしていた。その後、朝ごはんを食べて今日も両親ともに婆ちゃん家に向かった。両親は婆ちゃんに俺を預けて仕事に行った。
「リオ君、おはよう。今日もよろしくね。と言っても私も作業場にいるから何かあったら呼んでね」
「うん。おはよう、婆ちゃん。う〜ん……婆ちゃん、俺にも何か手伝える事ない? 店の掃き掃除でも水汲みでも出来る事なら何でもやるよ」
「(家にいてもやる事って言えば、修業しかないんだよなぁ。修業も良いんだけど今は実際に人と触れ合った方が後々の経験になると思うんだよね。特にこの世界やこの街についてもっと知れるから。多分、どんな時でも知識と経験と人脈は財産だよ)」
「そうだね〜。あっ……それじゃ……はいこれ。店の掃き掃除をお願いね。その後は、アミラと一緒に接客をお願いね」
婆ちゃんは悩んだ末に店のすぐ側に置いてあった箒を俺に渡した。どうやら今日から掃き掃除と接客を行うようだ。
「(引き受けて何だけど、俺は果たして接客なんて出来るかなぁ? いや、前世でコンビニアルバイトやったから出来るっちゃ出来るけど、どうなんだろう?)」
「でも、婆ちゃん。俺、接客なんてやった事ないよ。大丈夫かなぁ?」
心配になった俺は婆ちゃんに聞いた。
「大丈夫よ。リオ君は大きな声で挨拶をして、お客さんのお話相手になってくれれば良いからね。お客さんも普通は子供相手に難しい話をしないからね」
祖母は俺を安心させる為に右目をウィンクして話した。
「分かったよ! 掃除が終わったらやって見るよ」
「うん、素直でよろしい! 接客をしていれば自然とリオ君が私の孫だって周囲に自慢できるし、防犯にも繋がるからね〜」
祖母は会ったばかりの俺の事を色々考えてくれていた。
「(防犯までは考えてなかったなぁ。確かに俺はこの王都では何処ぞの冒険者の子供で人攫いや迷子になった時に先ず助けてもらえない。でも、多分、武器屋ミンクの孫としてなら、打算目的でも助けてくれる人は多くいるって信じたい)」
そう思いながら俺は仕事をこなした。
「おはようございま〜す! 今日から店の雑用をするフィデリオです! よろしくお願いしま〜す! ゴボッゴボッ! 喉痛ぇ」
俺は箒を持って店の前に立ちジレン、ユリス、アミラに挨拶をした。
「おう、よろしくな坊主。 あんま無理んすなよ」
「そうだぞーよろしく坊ちゃん。」
「うふふ、よろしくお願いします、フィデリオ坊ちゃん。」
彼らも作業を一旦中止し挨拶を仕返した。俺は彼らから挨拶を受けた事をキッカケに店前の掃き掃除を開始した。前世の道と違い道端に色々なゴミが落ちているために割とやり甲斐があった。
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